決議文・意見書・会長声明

死刑執行に対する会長声明

2022.03.30

2021年12月21日、東京拘置所及び大阪拘置所において3名の死刑が執行された。

これまで当会は、2008年、2016年及び2018年に発した会長声明において、死刑執行を停止した上で、死刑制度の存廃についての国民的議論を深めるために死刑に関する情報を広く国民に公開することを再三政府に対して求めていたところである。

しかしながら、この間、死刑に関する情報(死刑確定者の処遇、刑場の状況、執行方法、死刑執行の意思決定過程等)を広く国民に公開することが何ら行われない中で、2019年12月26日以降死刑執行がなされていなかったにもかかわらず、再び死刑が執行されたことは大変遺憾である。

また、今回、執行された死刑囚の中には再審請求中の者も含まれているところ、再審請求中の死刑執行については、国際連合の自由権規約委員会が、日本の第6回定期報告に対する最終見解で、日本の死刑制度に関して、再審請求に死刑の執行停止効がないことなどの問題点があると指摘しており、この点においても今回の死刑執行には問題があり、当会は今回の死刑執行に対し再び強く抗議するものである。

前回の会長声明でも指摘したが、死刑廃止は国際的な趨勢であり、2021年7月には、米国の司法長官が連邦レベルでの死刑の執行を停止する指示を出すなど、世界的な死刑廃止の流れはさらに進んでいる。米国が死刑制度を廃止すれば、OECDに加盟する38か国のうち死刑を執行する国は日本のみとなる。死刑制度の存廃について、法務省は「基本的には、各国において、独自に決定すべき問題」としている。しかし、もはや国際的な視点抜きに、死刑制度の当否を議論できないことは明かである。

法制審議会は、2020年、懲役刑と禁固刑を一本化して新自由刑(拘禁刑)に再編する刑法改正を答申した。これは、応報を主眼とする刑罰制度から、更生と教育を主眼とする刑罰制度への移行を意味するものであるが、死刑は罪を犯した者の更生を指向しない刑罰であり、新自由刑(拘禁刑)の理念と相容れないものであることは明かである。

法務省は、従前から、世論調査において多数の支持を得ているとして、死刑制度の存置を主張してきた。しかし、世論調査でも、死刑に代えて導入される刑罰の内容次第では、死刑の廃止も受け入れられる余地があることが示されている。また、国際人権(自由権)規約委員会等からは、「世論調査の結果にかかわらず」死刑制度の廃止を考慮するよう何度も勧告を受けているのであって、世論調査をよりどころに死刑制度の存置し続けることは許されない。

当会は、改めて政府に対し、死刑執行を停止した上で、死刑制度の存廃についての国民的議論を深めるために死刑に関する情報を広く国民に公開することを強く求める。

以上

2022(令和4)年3月23日
富山県弁護士会 会長 足 立 政 孝