決議文・意見書・会長声明
成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止のための実効性ある施策の実現を緊急に求める会長声明
2022.04.01
民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)が、本日施行された。
我が国の民法は、明治29年の制定以来、約120年もの長きにわたり成年年齢を20歳と定めてきたのであり、今般の引下げは、成年についての国民の認識と我が国の基本的な社会制度のあり方に大きな変革をもたらす歴史的な法改正である。とりわけ、成年年齢の引下げによって、18歳,19歳の若者は未成年者取消権を失うこととなり、若年消費者の被害拡大が強く懸念されるところである。
本法律の成立に際して、参議院法務委員会は、若年者への消費者被害の拡大を防止するための法整備として、本法律成立後2年以内にいわゆる「つけ込み型不当勧誘取消権」を創設すること、若者のマルチ商法等の被害の実態に即した必要な措置を講じること、実践的な消費者教育の実施を図ること等、全10項目にわたる具体的な施策を示した附帯決議を全会一致で採択し、ここに示された諸施策を、施行まで3年10か月という長期の準備期間内に実施することを求めていた。
また、当会も、成年年齢引下げについては、平成29年8月には、若年者への消費者被害拡大を防止するための十分な施策の準備がなされていないとして反対し、令和3年6月には、「1年後に迫る成年年齢引下げに伴う若年消費者被害の拡大防止に向けた実効性ある施策を直ちに実現することを求める会長声明」を発出して、政府に対し、本法律の施行までに、前記附帯決議に示されたような成年年齢引下げに伴う弊害防止のための実効性ある施策の確実な実現を求めてきたところである。
しかしながら、これらの施策が十分実施されず、多くの課題が残されたまま施行日を迎えている。
この間、成年年齢が18歳に引き下げられることの周知は一定程度進んだものの、引下げに伴う若年者への消費者被害の拡大のおそれ、とりわけ18歳・19歳の若者が未成年者取消権を失うことの影響については、およそ十分な周知がなされているとは言い難い。
また、若年者を消費者被害から救済する手段としての「つけ込み型不当勧誘取消権」の創設は、成立後2年以内という明確な期限が付されていたにもかかわらず、施行日を迎えた今に至っても、ごく一部の被害類型の取消権創設に向けて議論がなされているに過ぎず、なお有効な取消権の創設には至っていない。
さらに、被害予防の役割を期待された消費者教育についても、以前よりもその重要性が認識されてきているものの、十分な効果をあげているとはいえない状況であり、消費者庁が全都道府県に活用を働きかけている教材「社会への扉」でさえ、すべての高等学校等で活用されるには至っておらず、未だ普及の途上というのが現状である。
当会は、若年者の消費者被害防止のための実効性ある諸施策を緊急に実現することを改めて求めるとともに、本法律施行後に生じた若年者の消費者被害の内容や傾向を直ちに分析及び検証し、これらを踏まえた更なる被害防止のための施策を併せ検討・実施していくことを求める。
以上
2022(令和4)年4月1日
富山県弁護士会 会長 坂 本 義 夫