北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
返済不能な負債 破産しかない?
2026.06.15
北日本新聞掲載 2026年6月13日
執筆者:植木 亮 弁護士
経営している会社の廃業を検討しています。会社には返済しきれない負債がありますが、廃業するためには破産の手続をしなければならないのでしょうか。
帝国データバンクの調査によると、全国における2025年の「倒産」の件数(負債1000万円以上で、法的整理がなされた件数)は1万261件であり、そのうち破産は9567件で、倒産全体の93%超を占めています。こうした数字をみると、負債を返済できなくなった会社の廃業を検討する際に「破産をしなければならないのではないか」と考えるのは無理からぬところです。しかし、「破産しかない」と考えるのは早計です。
破産は、裁判所が選任した破産管財人の下で会社の財産を換価処分し、債権者に配当する手続です。手続を開始するに当たって債権者の同意を得る必要がないといった点で優れた手続ですが、取引先や従業員も含めた関係者を強制的に手続に巻き込み、そうした関係者に大きな不利益を及ぼす手続でもあります。破産は、非常に強力である反面、その副作用も大きい手続であるといえます。
破産手続によらずに、負債が返済不能になっている会社を廃業する手法の一つとして、「私的整理」があります。中小企業については、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に基づく「廃業型私的整理手続」があります。金融機関等との協議によって債務の減免を受けながら廃業を進めるものです。債務減免の対象となる債権者は主に金融機関であるため、取引先や従業員への影響を抑えることができます。
また、中小企業では、会社が金融機関から融資を受ける際に経営者個人が会社の連帯保証人になっているケースが少なくありません。こうした経営者保証による保証債務についても、破産手続によらずに整理する手法があります。「経営者保証に関するガイドライン」に基づく手続です。信用情報機関への登録(いわゆるブラックリストへの登録)を回避することができますし、自宅を売却せずに済む場合もあるなど、中小企業の経営者の皆さんにはぜひ知っておいていただきたい手続です。
一口に廃業といっても、その手法は様々です。早く着手するほど選択肢の幅が広がり、破産を回避できる可能性も高まります。廃業をお考えの場合には早期に弁護士に相談することをお勧めします。