北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

全財産知人に譲りたい

2025.09.10

北日本新聞掲載 2025年8月9日

執筆者:片口 浩子 弁護士

子どもと不仲なため、全財産を知人Aに譲る遺言を作成したいと思っています。何か問題はあるでしょうか。なお、私の配偶者は数年前に亡くなっており、子どもは1人だけです。

遺言書の内容は自由かといえば、そうではありません。遺言書の内容がそのまま実現されない場合があります。それが「遺留分」です。これは遺産について一定の立場にある法定相続人には、遺言書の意思に反してでも、一定の割合の遺産の承継を保障しようという制度です。

「一定の割合」は、法定相続人が誰かによって異なります。例えば法定相続人が子のみの場合、その子には、遺産の2分の1の遺留分が認められます。

今回のケースでも「知人Aに全ての財産を遺贈する」という遺言書があっても、お子さんはAさんに対して、遺産の2分の1相当額を請求することができます。知人とお子さんとの間での遺留分を巡る争いを避けるのであれば、遺留分に配慮した遺言書にするのが良いでしょう。

遺言の内容を実現するため、遺言執行者を指定することがあります。遺言執行者とは、遺言の内容に従って遺産の管理や必要な行為をする人です。

遺言執行者は一定の場合を除き、必須ではありません。ただ今回のケースで、あなたがお亡くなりになった後、お子さんが遺言に反して勝手に、遺産の不動産を相続したという登記をして、第三者に売却するような事態を避けたい場合には、遺言執行者を指定しておく方が良いでしょう。遺言執行者を指定しておけば、遺言に反する相続人の行為が無効となる可能性があるためです。

遺言書の内容や形式に不安な場合や遺言執行者を指定したい場合などは、一度弁護士に相談することをお勧めします。