北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

カスハラ 企業の対応は?

2025.06.27

北日本新聞掲載 2025年6月14日

執筆者:大橋 弘輝 弁護士

最近、お客さまからかなりきついクレームをたびたび受けています。何か対策はありますか。

事業者の従業員が、顧客や取引先から受ける嫌がらせや不当・過剰なクレームや言動を「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と言います。威嚇・脅迫、身体攻撃、誹謗中傷、セクハラ、長時間の拘束などが該当する可能性があります。
 カスハラは近年社会問題化しており、今月改正された法律でも定義が設けられました。法律では、業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超えた行為が、カスハラに当たります。社会通念上許容される範囲内の苦情や意見表明は、カスハラに当たりません。
 カスハラ行為は、犯罪となる場合があります。帰るように言われたのに居座ったら不退去罪、金銭を求めたら恐喝罪に該当する可能性があります。また犯罪に至らない場合でも、カスハラを受けた事業者や従業員は、行為者に損害賠償を求めることができるケースがあります。
 カスハラは企業活動の生命線である顧客や取引先から行われるため、これまでは対応が十分ではない企業も見受けられました。しかし以前から、従業員の安全確保は企業の義務となっています。また現在ではカスハラへの毅然とした対応が社会的な要請となりました。
 今後、企業にはカスハラ防止措置や対処方針をあらかじめ定めることが求められます。実際にカスハラ事案が発生した場合には、事実確認や従業員の安全確保、行為者への対応など、慎重な対応を遅滞なく行うことが重要です。
 企業が防止措置と事後対応を満足に行わないと、カスハラを直接受けた従業員から企業への損害賠償を求められることもあります。従業員を被害にさらした企業は批判を受ける可能性もあります。
 従業員と企業の双方を守るために、カスハラへの毅然とした対応が求められます。平時の対応策定にも事案発生時にも、弁護士は必要なアドバイスを行うことができます。