北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
身元保証人の責任いつまで?
2025.05.26
北日本新聞掲載 2025年5月10日
執筆者:谷口 恭子 弁護士
何年も前に親類が就職する際に身元保証人になりました。現在でも何かあったら私が責任を負うのでしょうか。
就職時に勤務先から求められる「身元保証」は、従業員が勤務先に損害を与えた場合に、その従業員とともにその損害を賠償する責任を負うという内容の勤務先との間の契約で、その保証人となった者が身元保証人です。
身元保証人は、将来の不確定な事実に基づき、思いがけない大きな責任を負うことになりますので、身元保証人を保護するために、法律では次のような決まりがあります。
有効期間については、期間を定めなかったときは3年間で契約が失効します。期間を定めても最大5年間までと決められています。身元保証契約の自動更新はできません。双方の合意によって延長したとしても最長5年とされています。
次は損害賠償額の上限(極度額)です。従前、継続的な取引関係から生じる不特定の債務について保証する契約(根保証契約といいます)について、保証人となる時点では、将来どれだけの金額の債務を保証するのかが分からないために、保証人が想定外の債務を負うことになりかねないことが問題となっていました。そこで、2020年4月1日に施行された民法改正により、個人が保証人になる根保証契約についてのルールが新設され、保証人が支払いの責任を負う金額の上限額を定めなければ契約自体が無効となることになりました。
身元保証は、個人が保証人になる根保証契約の一つです。このため身元保証人になったのが2020年4月1日より後であれば、身元保証書に損害賠償の上限額が記載されていなかった場合、身元保証人となった契約自体が無効となります。
また、従業員に不適任・不誠実な事由があり、身元保証人の責任問題になりそうな場合や、従業員の任務や任地が変更されたために身元保証人の責任が増したり、監督が困難になったりする場合は、勤務先は身元保証人に通知しなければなりません。この通知を受けた場合や通知前でもそのような事情を知った際には、身元保証人は将来に向けて契約を解除することができます
ご自分の身元保証人の責任がどうなのかはっきりさせたいとお考えの際には、弁護士に相談されることをお勧めします。