北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

定期賃貸借とは?

2025.03.26

北日本新聞掲載 2025年3月8日

執筆者:水谷 敏彦 弁護士

アパートを借りていて、家主さんと取り交わした契約書には「定期賃貸借」と書いてあります。普通の賃貸借とどこが違うのでしょうか。

普通の建物賃貸借では、契約期間が満了すると契約は原則として更新されます。借地借家法30条は、契約更新しないとする取り決めがあったとしても、その取り決めを無効としています。これは、建物の借主が短期間で追い出されないよう借主を保護するためです。

これに対し「定期賃貸借」は、期間満了時の更新はなく完全に終了してしまう契約で、普通の建物賃貸借の例外に当たります。借主に誤解を与えないよう、借地借家法38条は、契約書とは別に書面を作った上で、契約期間満了で契約が終了し、更新がないことを説明しなければならないと定めています。

ところが実際には、契約更新がある、すなわち借主は短期間で出ていく必要はないとの説明だったのに、契約書などの書類上は「定期賃貸借」とされていることが時々みられるようです。定期賃貸借の形式をとることによって、家主からみて問題がある賃借人を、契約期間満了時に追い出しやすくする狙いがあると考えられます。

しかし、書類上は定期賃貸借とされていても、契約更新があるとの説明だった(その事実の証明が容易ではない場合があり得ます)ならば、実態に即して通常の賃貸借であると解釈されます。

賃貸借契約を締結するときに、説明と異なる定期賃貸借の書類を示されたら、更新の有無をきちんと確認して証拠に残すべきです。また、もし定期賃貸借を理由に契約更新を拒まれているならば、契約時に本当に契約更新はないと説明されていたのかを検討する必要があります。