北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

管理職は残業代が出ない?支払われる可能性も

2024.12.16

北日本新聞掲載 2024年12月14日

執筆者:春山 然浩 弁護士

私は飲食店の店長です。会社は、私が管理職だとして残業代を支払ってくれません。

労働基準法では「監督若しくは管理の地位にある者」、いわゆる管理監督者については、例外的に残業代を支払わなくてよいと定められています。この管理監督者とは、労働条件の決定など労務管理について経営者と一体的立場にある者を指します。

管理監督者に当たるか否かは、店長や課長などの役職名はほぼ関係がなく、労働や立場の実態によって判断されるものとされています。具体的には①職務の内容、権限、責任②出退社の自由度③その地位にふさわしい処遇があるか-などから判断されます。

裁判例でも、管理監督者に当たるかはかなり限定的に判断されており、その会社で管理職と扱われる役職にいたとしても、労働基準法の管理監督者には当たらないとして、残業代が支払われるとの判断をされる例も多いです。

例えば①店長は、パートの面接には関わるものの採用の判断まではせず、店員の昇給・昇格の判断もしておらず、ましてや経営についての判断などしていない上に、店長自身も調理や接客を行っている②店長も含めてシフトが組まれていて、出退勤の裁量はない③毎月数万円の役職手当はあるが、給料額は一般従業員とそれほど変わらない-という状況であれば管理監督者には当たらず、残業代請求が認められる可能性が高いように思われます。

残業代は時給を計算して、それに実労働時間をかけて算出しますが、何を時給計算の基礎にするかや、実労働時間がどれだけか、その証拠があるかなど、かなり複雑な検討が必要です。このため、会社との話し合いで解決できない場合や、独力での計算が難しい場合は、弁護士にご相談することをお勧めします。