北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

相続問題 事前に防ぐには?-遺言執行者の指定を

2024.11.13

北日本新聞掲載 2024年11月9日

執筆者:深水 信行 弁護士

私には相続が予定されている財産として自宅と預金・生命保険(本人受け取り)があります。私の死後、相続問題が発生しないようにするため、遺言を作っておくつもりですが、ほかにどのようなことをしておけばよいでしょうか。

葬儀や遺品の整理についても、生前から処理を依頼しておけるのでしょうか。

相続問題を回避するにはまず遺言を作っておくことが重要です。また遺言で「遺言執行者」を指定しておくことによって、相続手続きを円滑に進めることができます。

遺言執行者が指定されている場合、不動産や自動車の登記・登録名義変更や預貯金の引き出しといった相続に伴う諸手続きを遺言執行者が行ってくれるため、相続人が手続きごとに必要書類に実印を押して印鑑証明書を添付するといった煩雑な手続きが原則不要になります。

このほか遺言執行者には、遺言で遺贈、死後認知、推定相続人の廃除といった手続きを執行する権限を付与することもできます。遺言書に上記についての定めがある場合、遺言執行者は、被相続人の死後、各手続きを実行することになります。遺言執行者には、法律上必要とされる資格はありませんが、弁護士ら専門家を指定しておけば、より遺言執行の適正さが確保されることになります。

葬儀を執り行ったり、行政機関への各種届出をしたり、遺品の整理をしたりすることは、遺言執行者の任務ではありません。これらについて相続人以外の第三者に依頼したいときは、遺言とは別に「死後事務委任契約」を結ぶ必要があります。この形式については、法律上特別な定めはありませんが、遺言と同様に公正証書で締結しておく方法が最も確実な方法です。

葬儀や遺品処理について不安がある方は遺言を作るほか、あらかじめ死後事務委任契約を締結しておくことをお勧めします。