北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
友人に貸した金 返してもらえる?-消滅時効に注意
2024.09.14
北日本新聞掲載 2024年9月14日
執筆者:弁護士 丸山 哲司
数年前に友人にお金を貸しましたが、まだ返してもらっていません。「金銭消 費貸借契約書」はちゃんと作ってあります。消滅時効になると貸金を返しても らえないと聞きました。急いで返済を求めた方が良いのでしょうか。
「消滅時効」というのは一定期間が経過して時効が完成すると債権が消滅する制度です。正確に言うと、債務者が消滅時効の利益を受けることを相手に伝える(これを「時効の援用」と言います)と、債権の行使が認められなくなるのです。債務者は返還を免れるのを潔しとしないなら、時効利益を「放棄」することもできます。
この消滅時効ですが、以前は債権の種類や職業ごとで特別に時効期間を定め (例えば飲み屋のツケは1年で時効消滅することとされていました)、そうした 特別の定めのない一般の債権の消滅時効は10年とされていました。ところが2020年4月に改正民法が施行され、これ以後成立した債権は権利を行使できることを知った時から5年(知らなくても権利を行使できる時から10年)とシンプルな形に統一されました。
では時効が迫っている場合どうしたら良いでしょうか。時効期間の経過前に「催告(貸金を返せと請求)」すれば6カ月間、時効の完成を阻止できます。これを「時効の完成猶予」と言います。しかしその6カ月以内に訴え出るなどの強力な法的手段をとらなければなりません。
時効が完成してしまっているかは実際には、金銭消費貸借契約の成立時期や、返済期限の定め、債務者の「承認」(債権が存在することについて借りた人が認めること。例えば支払いの猶予をお願いすると「承認」に当たります)の有無などを確認する必要があるでしょう。