北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

フリーランス保護新法とは?-取引条件の明示義務づけ

2024.01.13

北日本新聞掲載 2024年1月13日

執筆者:弁護士 今村 元

私はフリーのグラフィックデザイナーとして働いています。フリーランス保護新法と呼ばれる法律ができたと聞きました。この法律によって、フリーランスの働き方はどう変わるのでしょうか。

ご質問の法律は2023年4月に成立しました。24年秋ごろまでには施行される見込みです。

フリーランスとは業務に応じて企業や団体と自由に契約を交わし働く人です。相談者のような職業が典型です。フリーランスには、労働基準法や最低賃金法の適用がないため、最低賃金、労働時間、労働災害補償などの規制がありません。それではあまりにも保護に欠けるので、この法律ができました。

この法律の主な目的は、取引の適正化と就業環境整備です。対象としているのは企業を相手に仕事をしている方の取引です。取引先が個人消費者の場合は対象外になります。

一番のポイントは、発注者に取引条件の明示を義務づけたことです。明示される最低限の内容は、業務の内容、報酬額、支払期日、その他公正取引委員会規則で定めるもの(現時点で未定)です。

業務完了から60日以内に報酬支払いが義務づけられました。また①一方的な受領拒否②一方的な報酬減額③一方的な返品④買いたたき⑤一方的な押し売り⑥金銭・役務などの利益提供の強要⑦不当な変更・やり直しの強要(下請法に類似)-は禁止されます。

この法律では一定の条件で、育児や介護などへの配慮が求められますし、発注者はハラスメントに関する相談に適切に対応するといった体制整備などが義務づけられます。契約を途中で解除する場合は、原則30日前までの事前予告が必要です。

取引先から以前と同じような意識で不当な要求を押しつけられるようなことがあれば、弁護士にご相談ください。