北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

相続登記の義務化 いつから?-来年4月スタート

2023.12.09

北日本新聞掲載 2023年12月9日

執筆者:弁護士 神保 壽之

土地や建物の所有者が亡くなったときの「相続登記」が義務化されると聞きました。なぜ義務化されるのでしょうか。また、いつから何がどう変わるのか教えてください。

これまでの制度では、相続登記は義務ではありませんでした。しかし不動産登記法の改正によって、来年4月1日から相続登記の申請が義務化されることになりました。

背景となったのが「所有者不明土地」問題です。相続登記がされないままであれば、現在の所有者が誰か、連絡先がどこかが直ちに分かりません。何代も相続登記の放置が続くと権利者が何十人にわたるという事態も生じます。この問題は東日本大震災後の復興の妨げにもなりました。

相続登記の義務化後は、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。制度開始の来年4月1日より前に相続が発生していた事案であっても、制度開始から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられています。

そして正当な理由なく相続登記を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となります。

とはいえ遺産分割を巡る争いがあるなど、相続登記がすぐにできないこともあります。そこで相続人が簡易に義務を果たせるように「相続人申告登記」の制度も新設されました。

これは不動産の所有名義人についての相続が開始した旨と、自身がその不動産の所有名義人の相続人である旨を申告する登記で、この登記を行えば、相続登記の申請義務が果たされたとみなされます。

相続人申告登記の後に遺産分割が成立したときは、その成立時から3年以内に所有権移転登記をする必要があります。