北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

闇バイト 法的な責任は?-受け子 懲役10年以下

2023.11.11

北日本新聞掲載 2023年11月11日

執筆者:弁護士 古木 達也

最近、「闇バイト」に関するニュースを聞きます。闇バイトには、法的にどのような責任が生じますか。

闇バイトとは、アルバイトの募集を装って実際には、特殊詐欺や強盗の実行犯など、犯罪組織の手先として活動する者を募集するものです。SNS(交流サイト)やインターネット上で、「短時間で高収入が得られる」など甘い言葉で募集されています。例えば「荷物を受け取るだけの仕事」と説明を受けたが、実態は特殊詐欺で被害者から金品を受け取るという犯罪行為「受け子」だったというものです。今回は、この受け子の例で説明します。

まず刑事的な責任として受け子は、刑法上の詐欺罪の共犯に当たります。法定刑は10年以下の懲役です。受け子の場合、初犯でも実刑になることが少なくありません。「荷物を受け取るだけと聞いており、詐欺とは知らなかった」と弁解する人もいますが、特殊詐欺が社会問題化している現状からすると、裁判所からは信用できないと判断されるでしょう。

次に民事的な責任として、被害者への損害賠償責任が発生します。特殊詐欺グループには「指示役」「かけ子」「出し子」といった役割分担があって全責任が受け子にあるわけではないことからすると、被害の一部だけの責任を負えばよいとも思えますが、実際には被害全額の請求を受けることになります。このような共犯は「共同不法行為」と言って、一部の責任しかなくても他の共犯者と連帯して、全額について損害賠償義務を負うとされています。

闇バイトは、収入の少ない人や若者がターゲットとされることが多々あります。しかし一度関わってしまうと、報酬とは比較にならない損失を被ります。依頼主が素性を明かさなかったり、通信履歴の復元が困難なアプリを使用したりする場合には、闇バイトの可能性が高いと言えます。万一関わってしまった場合には、すぐに弁護士に相談してください。