北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
コスト増なのに取引先が代金上げてくれない-買いたたき 窓口で相談
2023.07.08
北日本新聞掲載 2023年7月8日
執筆者:弁護士 鍋谷 博志
当社は、ある会社から委託されて部品を製造しています。エネルギー価格、原 材料費、労務費が大きく上昇しているのに、取引先会社は代金額を上げてくれません。何かできることはないでしょうか。
下請け取引を適正化して下請け事業者の利益を守るための法律として、下請代金支払遅延等防止法(下請法)があります。
下請法では、親事業者に対して書面の交付、年率14.6%の遅延利息の支払いなどの四つの義務、一部の義務違反行為などに対する罰則と、通常支払われる対価に比べて著しく低い額の代金を不当に定めてはならないとする「買いたたきの禁止」など11項目の禁止事項などが定められています。エネルギー価格、原材料費、 労務費の上昇を取引価格に反映しないことは、下請法上の「買いたたき」に該当する可能性があります。
公正取引委員会と中小企業庁は毎年、親事業者と下請け事業者の双方に対する書面調査を実施するなどして、下請法違反行為の発見に努めており、親事業者の事業所の立ち入り検査なども行っています。違反行為に対しては、違反行為の取りやめや原状回復措置を取ることなどについて勧告が行われることがあり、その場合は事業者名と違反事実・勧告の概要などを公表しています。
エネルギー価格、原材料費、労務費の高騰については、経済産業省と公正取引委員会から、関係事業者団体に対し、それらの適正な価格転嫁を含む下請け取引の適正化に関する要請も行われました。
親事業者に下請法上の問題点を認識してもらい、改善を求めることも考えられますが、親事業者が取り合ってくれない場合や親事業者に直接問題点を指摘することが難しい場合などは、公正取引委員会や中小企業庁に相談することが考えられます。
公正取引委員会と中小企業庁では、相談窓口を設けており、電話、郵送、ホームページ上のフォームへの入力などの方法で具体的な違反行為についての申告も受け付けています。経済産業省と中小企業庁が下請け取引の適正化を推進するために全国に設置している「下請かけこみ寺」でも、原材料・エネルギーコスト増に関する相談を受けています。
下請法が適用される取引は、事業者の資本金や取引の内容によって定められており、いわゆる下請取引の全てが下請法適用の対象となるものではありませんが、問題がある場合は、相談窓口の利用や弁護士に相談することをお勧めします。