北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

相続した土地 国に引き取ってもらえる?-4月から新制度スタート

2023.05.13

北日本新聞掲載 2023年5月13日

執筆者:弁護士 谷口 恭子

相続で土地を取得したのですが全く利用の可能性がなく負担ばかりかかってしまいます。土地を国に引き取ってもらうことはできないものでしょうか。

思いがけず相続によって土地を取得したものの、その土地を利用する予定がなく、管理の負担だけがかかり、「負の遺産となってしまい困っている」「次の世代に引き継ぎたくないので手放したい」といった相談を受けることがあります。   

このような場合に、管理ができないまま放置され将来的に所有者が不明な土地になってしまうことを防ぐため、土地を国に引き取ってもらうことを可能にする新しい制度が創設されました。「相続土地国庫帰属制度」と言い、4 月27日から始まりました。この制度は相続があった時にさかのぼって利用できます。

この制度について簡単に説明します。

まず、この制度に申請できるのは「相続」や「遺贈(相続人に対する遺贈に限る)」によって、土地の全部または一部を取得した場合です。売買などで自ら土地を取得した場合は申請できません。土地が共有状態にある場合には、共有者全員で共同して申請する必要があります。

対象となる土地にも要件があります。例えば、建物がない更地であること、担保権や使用収益権が設定されていないこと、他人による使用が予定されていないこと、土壌汚染がないこと、境界などに関する争いがないこと、危険な崖がないこと、通常の管理や処分をするにあたり過分の費用または労力を要するものでないことなどで、政令によって定められています。

これらの要件を満たしているか審査され、必要に応じて実地調査、申請者や関係者の聴取があります。要件を満たすと認められれば、申請者に対し、国庫帰属につき承認の通知がなされます。

この制度を利用するときは、申請時に「審査手数料」を、承認後に土地管理費相当額10年分の「負担金」を支払う必要があります。その点も含め、この制度の利用を考えられている方は、弁護士に相談してください。

安易に土地の管理をおろそかにすることは望ましくありません。一つの新しい選択肢として紹介しました。