北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
木の枝が越境 切ってもよい?-自ら伐採できる場合も
2023.04.08
北日本新聞掲載 2023年4月8日
執筆者:弁護士 草野 友里恵
私の自宅の隣地は長年管理がされず、草木が伸び放題です。私の自宅の敷地内へ、枝が越境してきています。非常に迷惑なので枝を伐採したり、隣地自体を適切に管理できる人に引き取ってもらったりしてほしいのですが、そのようなことは可能でしょうか。
まずは、枝の伐採についてお答えします。
隣の草木は隣地の所有者の所有物なので、枝が越境していたとしても、勝手に伐採してはいけないのが大原則です。
そのため、まずは隣地の所有者に枝を伐採するよう頼むことが第一です。しかし、頼んでも切除してくれないときや、所有者が分からないこともあります。 以前は、そのような場合であっても自ら伐採することは許されず、訴訟手続が必要でした。
そんな中、2023年4月施行の民法改正により、一定の場合には自ら伐採することも許されることになりました。隣地の所有者に頼んで相当期間たったのに切除してくれない場合や、調査を尽くしても隣地の所有者が誰か分からない・所在が分からない場合、急迫の事情がある場合などです。
ただし、切除する前に弁護士に相談することをお勧めします。
さらに、今回の民法改正では、所有者による適切な管理がなされていない土地や、所有者が不明の土地について、管理人を選任する制度もできました。管理不全土地管理制度と所有者不明土地管理制度です。いずれも、申し立てにより裁判所が土地の管理人を選任し、その管理人が対象の土地を適切に管理していくという制度です。
管理人の選任にはいくつか要件があります。選任を求めて申し立てをするには、自分が被害を受けているなどの利害関係を有すること、管理人による管理の必要性があること、所有者不明土地管理制度については、調査を尽くしても所有者が誰かやその所在が不明であることなどです。管理費用確保のため、申し立てをする人が、裁判所にお金を納付する必要もあります。
枝の伐採についても、管理人の選任についても、まずは隣地の所有者について調べる必要があります。隣地について困っている方は、是非、弁護士に相談してみてください。