北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

いとこの相続財産もらえる?-特別縁故者として請求

2023.03.11

北日本新聞掲載 2023年3月11日

執筆者:弁護士 西山 貞義

私には重い障害を持ったいとこがおり、ずっと面倒を見てきました。先日、いとこが亡くなりました。相続人はいません。私はいとこの相続財産をもらえないのでしょうか。

障害のあるいとこの面倒を見るのは大変だったと思います。費用もかかったのではないでしょうか。民法には、あなたのような方のために、立て替え金を弁済してもらえたり、「特別縁故者」として相続財産を分けてもらえたりする制度があります。

そもそも相続財産は、相続人が管理や処分をします。ただ「相続人が誰もいない」という状況は時々発生します。誰も相続財産の管理や処分ができなくなれば、とても不都合です。そこで利害関係人は家庭裁判所に対し、相続財産管理人の選任を請求することができます。利害関係人には、あなたのように被相続人(亡くなった人)の面倒を見てきた人や被相続人の債権者などが含まれます。

相続財産管理人は選任後、相続財産の管理や清算を行います。被相続人に債権者がいれば、相続財産管理人は相続財産の中から弁済を行います。もしあなたが、本来いとこが支払うべき医療費などを立て替えていた場合は、債権者として立て替え金を弁済してもらえる可能性があります。

弁済の手続きを経てもまだ相続財産が残る場合、家庭裁判所は「特別縁故者」から請求を受け、相当と認めるときは、相続財産の全部または一部を特別縁故者に与えることができるとされています。特別縁故者には、あなたのように「被相続人の療養看護に努めた者」や「被相続人と生計を同じくしていた者」などが含まれます。

あなたの場合、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、債権者として立て替え金の弁済を受ける、また相続財産分与を請求する検討を行うことになります。

もっとも、相続財産管理人の選任にはそれなりの費用がかかります。制度を利用することが経済的に合理的なのかを見極めるためには、相続財産の内容や評価額、立て替え金や他の債権者の有無、特別縁故者に該当する可能性などを慎重に検討する必要があります。

仮に相続人がいても「特別寄与料」という新しい制度を利用して、相続人に対し一定の金銭を請求できる可能性があります。いずれの場合も、弁護士に相談することをお勧めします。