北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

どう変わった?ネット投稿者特定の制度-訴訟よりも迅速・簡易

2023.01.16

北日本新聞掲載 2023年1月14日

執筆者:弁護士 春山 然浩

インターネットでの誹謗中傷について、投稿者が誰か探し当てるための法制度が改正されたと聞きました。どのように変わったのでしょうか。

インターネットでの誹謗中傷記事について投稿者の氏名住所を明らかにするには、まずサイト管理者に対するアクセスログの情報開示請求をして、次に接続プロバイダーに対して氏名住所の開示を求める民事訴訟を行う必要がありました(このほか警察の捜査による方法もあります)。時間も、スムーズにいっても半年ないし1年近くかかっていました。これを容易にするため、昨年10月に、訴訟ではない手続きで開示をさせる制度(発信者情報開示命令制度)が施行されました。

裁判所が開示の適否を判断する点はこれまでと一緒ですが、サイト管理者とプロバイダーを一つの手続きで相手にできる点、訴訟よりも迅速・簡易な手続きで開示命令が発令される点で、新制度の方が被害者に有利です。また、訴訟では双方が主張立証を尽くす必要がある上、プロバイダーが東京の会社だと東京の裁判所に出向かなければならない場合もあり、その分費用と時間がかかります。新制度では訴訟に比べれば審理が簡易で、少なくとも弁護士が代理人の場合は、東京の会社が相手でもオンラインなどでの手続き出席が可能なため、費用・時間が訴訟より小さく済むことが多いかと思います。

ただ、施行から間がなく解釈や運用が固まっておらず、簡易な審理で裁判所の判断が出るため、サイト管理者やプロバイダーによっては新制度での裁判所の判断に従わない者もいると言われています。このようなサイト管理者・プロバイダーが相手になる場合は、従来の方法で手続きを進める必要があります。

また、開示を求める手続きは新しくなりましたが、法的な権利を侵害する記事しか投稿者の氏名住所の開示を求められない点は従前と変わらないので、ネット上で被害を受けたと感じても開示を求められるかは法律的な検討を要します。投稿者の特定につながる情報の保存期間も従来通りですので、投稿から数カ月で特定が不可能になる場合があります。このため、誹謗中傷の被害に遭い、投稿者に対して被害回復を求める場合は、できる限り早く弁護士に相談・依頼することをお勧めします。