北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

契約満了 アパート出ないと駄目?-更新拒絶は正当な理由必要

2022.09.10

北日本新聞掲載 2022年9月10日

執筆者:弁護士 加藤 翔

アパートを契約期間2年で借りて住んでおり、半年後に期間満了を迎えます。 家主からは期間が満了したら明け渡すよう言われています。アパートを出ていかなければいけませんか。

まず家主との契約が、普通の建物賃貸借か、契約を更新しないことが契約書によって合意された定期建物賃貸借かを確認します。

定期建物賃貸借の場合は更新がないことを最初から合意しているので、期間満了により契約は終了し、借り主は建物を明け渡す必要があります。そうした合意のない普通の建物賃貸借の場合、借地借家法では、家主が期間満了により賃貸借を終了させるには契約を更新しない正当事由が必要とされています。

では正当事由の有無はどのように判断するのでしょうか。まず考慮されるのは①家主と借り主双方の建物の使用を必要とする事情です。家主側と借り主側で、どちらがどれだけその建物を生活や営業などのために使う必要性があるのか、その程度を比較します。例えば、借り主には病人がいて生活状態が苦しく、他に居住建物が見つからないなどの事情があるのに対し、家主にはそれほど使用の必要性が認められないケースは、この判断要素だけで正当事由の有無が決まることが多いでしょう。

これだけでは判断がつかない場合は②賃貸借に関するこれまでの経過(建物を借りるに至った事情、賃料額の多寡、借り主の賃料不払いや用法違反の有無、権利金や更新料の授受の有無など)③建物の利用状況(借り主が建物をどのように、どのくらい利用してきたか)④建物の現況(老朽化などによる建て替えの必要性)⑤家主からの財産上の給付(立ち退き料の有無・内容)といった要素も含めて総合的に考慮し、家主の更新拒絶に正当事由があるかを判断することになります。

更新拒絶に正当事由が認められない場合、これまでと同じ条件で契約を更新したものとみなされ(ただし契約期間は2年でなく期間の定めのない賃貸借となります)、借り主は建物の使用を継続できます。

要点を説明しましたが、冒頭で紹介した、更新拒絶に正当事由のいらない定期建物賃貸借の成立には、契約前に一定の手続きが必要です。また、普通建物賃貸借における正当事由は総合的に判断することになります。ご自身のケースがどうなるのか判断がつかない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。