北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

購入したばかりのペットが病気で死んでしまった-返金や治療費 請求できる

2022.07.09

北日本新聞掲載 2022年7月9日

執筆者:弁護士 片口 浩子

ペットショップで犬を購入した後、感染症にかかっていることが分かり、治療もむなしく死んでしまいました。店に代金や治療費を請求できますか。

家族の一員であるペットが亡くなるのはつらいと思います。今回は犬を購入する際、店から病気について説明がなかったという前提でお答えいたします。

ご相談に関連した裁判例に、ペットショップには健康で病気にかかっていない動物を売り渡す義務があると認めたものがあります。この裁判例に基づくと、病気の犬を販売するのは義務に違反しているため、売買契約を解除し、代金の返金を求めることができます。

一方、治療費や葬儀代といった損害を請求するには、ペットショップの故意または過失が必要とされています。つまり店側が犬の病気を知っていたか、知ることができたといえる場合、請求できることになります。

購入の際に「いかなる場合でもペットショップは損害賠償責任を負わない」といった契約書にサインをした場合があるかもしれません。しかし事業者が一切解除に応じないとか、一切の責任を免れるという条項は、消費者契約法に基づき無効となる可能性があるので、あきらめる必要はありません。

簡単に説明しましたが、解除や損害賠償請求ができるかどうかは、病気の内容や程度、購入前から病気だったといえるかといった事情によって異なります。お困りの方は弁護士に相談されることをお勧めします。

これからペットを飼いたいという方は、なるべくトラブルは避けたいでしょう。大切なのは、動物をきちんと飼育管理している店を見極めることです。

動物愛護法等では、ペットショップは犬猫を販売する際、病歴やワクチン接種の有無、飼い方等の説明をしなければならないと定められています。今年6月からは店舗のケージの広さや従業員1 人当たりの犬猫の飼養保管頭数の上限といった新たなルールの適用も始まりました。

ルールを守り、大切に動物を取り扱っているペットショップから購入することがトラブル回避の一つの方法です。