北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
ワクチン接種 回答義務ある?-可能な範囲で調査協力を
2022.02.12
北日本新聞掲載 2022年2月12日
執筆者:南果弁護士
勤務先の会社で、新型コロナウイルスのワクチン接種状況について調査がありました。回答する義務はありますか?
ワクチン接種の有無は、健康情報として要配慮個人情報に当たり、秘匿の必要性が高い個人情報です。そのため、会社がワクチン接種状況に関する情報を取得するためには、取得した情報の利用目的について特定し、公表または通知をする必要があります。また従業員本人の同意も必要で、強制的に接種状況の回答を求めることはできません。
従って、あなたとしては事情があって、どうしても回答したくない場合には、無理に回答する必要はありません。一方で、会社は従業員に対して「安全配慮義務」を負っており、職場クラスターなどを発生させないため、感染拡大防止に向けた対策を適切に行わなければなりません。またワクチン接種のための勤務シフトの配慮など、労務管理上の問題もあります。会社側からすれば、従業員の皆さんのワクチン接種状況を把握しておく必要性があり、調査そのものは許されると考えられます。
そこで、利用目的が明確に示されており、社内で調査結果を把握できる者が必要最小限度の担当者に限定されているなど、従業員のプライバシーに配慮された調査方法による場合には、差し支えない範囲で調査に協力することを検討されるのがよいのではないしょうか。
なおワクチン接種自体は、接種による感染症予防の効果と副反応のリスクについて理解した上で、受けるかどうかを個人ごとに判断すればよく、自由意思に委ねられています。
もちろん従業員の健康確保のため、会社が手洗い、うがい、マスクの着用と並んでワクチン接種を推奨することには問題はありませんが、強制することはできません。ワクチン接種も、接種状況の調査への回答も、あなた自身でしっかりと必要性などを考え、決めることが重要です。