北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
法務局の遺言書保管制度とは?-自筆証書の問題点解消
2021.11.13
北日本新聞掲載 2021年11月13日
執筆者:鍋谷博志弁護士
自分が亡くなったときに備えて遺言書を残しておきたいと考えています。法務局で遺言書を保管してもらえる制度があると聞きましたが、どのような制度なのでしょうか。
遺言者が自筆で作成した遺言書(自筆証書遺言書)を法務局で保管する制度 (自筆証書遺言書保管制度)が、2020年7月に始まりました。法務局が遺言書の原本とその画像データを長期間にわたって保管・管理するものです。
自筆証書遺言書は簡単に費用をかけずに作成できますが、法律上の要件を欠いて効力がない物になることや、紛失、盗難、改ざんの恐れ、遺言書が相続人に発見されないままとなってしまうなどの問題があります。遺言者が亡くなった後に家庭裁判所で遺言書の検認の手続きを受ける必要もあります。
法務局の保管制度を利用する場合、申請時に遺言書が法律上の要件を満たしているかチェックされるため形式上の要件を欠いて無効となることはなく、紛失、盗難、改ざんのリスクもありません。遺言者が希望すれば、死亡後に法務局からあらかじめ指定した者に遺言書の保管について知らせてもらうこともできます。家庭裁判所で遺言書の検認の手続きを受ける必要もありません。
このように、法務局の保管制度は、自筆証書遺言の問題点を大幅に解消できる制度です。自筆証書遺言の方法で遺言書を作成する場合、この制度の利用を検討されるとよいと思います。
なお、公証人が遺言者の意思を確認し、証人の立会いの下で作成する公正証書遺言の方法は、遺言書の有効性が争われる可能性が低くなるという大きなメリットがあります。また、自筆証書遺言書保管制度では内容のチェックはされないため、遺産や相続の内容が実際の相続時に問題が生じないよう適切に記載されているかどうか、十分に注意する必要があります。
遺言書作成に万全を期すため、どのような方法や内容で遺言書を作成するべきか、弁護士に相談されることをお勧めします。