北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
全財産が再婚相手に 子どもの権利は-遺留分の請求を
2019.06.08
北日本新聞掲載 2019年6月8日
執筆者:太田悠史弁護士
半年前に亡くなった父が、自筆の遺言書を残していました。ずっと前に母と離婚し、別の女性と再婚しましたが、子どもは私だけです。遺言書は全財産を再婚相手に相続させる内容でしたが、筆跡や体裁などを見ると、父が作成したのか疑問です。遺言書について私が主張できることはありますか。また、この遺言書が本当に父が作成したものであった場合、私には何の権利もないのでしょうか。
遺言書がお父様によって作成されたものでなければ、遺言は法的な効力を持ちません。無効な場合、あなたには法の定める相続分として、相続財産の2分の1に相当する財産を取得する権利があります。
一方で、遺言書がお父様によって作成されたのか疑わしくても、再婚相手がそれを認めることはまずないでしょう。あなたとしては、遺言が無効であることの確認を求めて訴訟などの法的手続きを取る必要があります。結果的に遺言書が有効だった場合や、そもそも遺言の効力を争わない場合であっても、子であるあなたには、お父さまの相続財産に関し、「遺留分」という最低限の取得分を求める権利があります。
遺留分は、たとえ再婚相手に全てを相続させるという内容の遺言書であったとしても、これを奪うことはできません。あなたの場合、再婚相手に対して、遺留分を請求すれば、相続分の4分の1に相当する財産を取得する権利があります。この遺留分の請求のことを「遺留分減殺請求」といいます。
ただし、この遺留分減殺請求は、あなたが遺言書の存在と内容を知った時点から1年以内に行わなければ、消滅時効によりできなくなります。そのため、遺言の効力を争っても、結果的に有効であるという結論になる可能性があることから、念のために遺留分減殺請求はしておく方が望ましいと考えられます。また後日、その請求の有無について争いになることを避けるため、記録の残る配達証明付き内容証明郵便で書面を郵送しておいた方がよいでしょう。
遺言無効の確認を求める法的な手続きは難しい部分があり、遺留分の計算も決して容易ではありません。もしお悩みでしたら、弁護士に相談することをお勧めいたします。