北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
派遣先から雇い止めされた-「みなし制度」の適用検討
2018.12.08
北日本新聞掲載 2018年12月8日
執筆者:水谷敏彦弁護士
私は、A社から派遣されてB社の工場で機械部品製造の業務に就いています。A社とは3カ月ごとに契約を更新し、B社での勤務は4年になります。ところが、B社から急に「来月から来なくてもよい」と言われました。引き続きB社で働きたいのですが…。
あなたのように派遣で働く労働者を守るための法律として、労働者派遣法(「派遣法」)があり、その第40条の6に規定された「労働契約申込みみなし制度」が適用できるか検討してみるべきです。
これは、①派遣労働者を派遣禁止業務に従事させる、②無許可の派遣元事業主から労働者派遣を受け入れる、③事業所単位または個人単位での期間制限に違反して派遣を受け入れる、④いわゆる〝偽装請負〟(派遣法などの法規制を免れる目的で、請負契約や業務委託の形式を取って労働者の供給を行う脱法行為)―などの4類型の違法派遣のいずれかがあるとき、派遣先(あなたの場合はB社)が派遣労働者(あなた)に対して労働契約の申し込みをしたものとみなすという制度です。
この制度が適用されてB社があなたに労働契約の申し込みをしたという扱いになれば、あなたは、その申し込みを承諾することで直接B社との間で労働契約を成立させ、従前と同一の労働条件の下で働くことができます。
4類型のうち、③の事業所単位の期間制限違反とは、「事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について」3年を超えて「継続して」派遣を受け入れることをいいます。個人単位のものは、「事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について」3年を超える期間、「継続して」同一の派遣労働者の役務の提供を受けることをいいます。派遣法が派遣期間を原則3年に制限したのは、必要な労働力をまかなうことが恒常化するのを防止するためです。
ただし、③の事業所単位については、過半数労働組合などから適正に意見聴取をすれば3年を超える延長が可能で、その場合にはみなし制度の適用はありません。個人単位にこうした例外はありません。
「組織単位」とは「事業所その他就業の場所」の中の「課」や「グループ」を指すと一応解釈されていますが、実態に即して判断するときに、例えば、工場の製造ラインごとに「組織単位」が違うのかどうか難しい問題が出てきます。「継続して」については、就労しない期間(クーリング期間)が空いても3カ月を超えなければ「継続して」の要件を満たす扱いになっています。
なお、このみなし制度は、派遣先(B社)が違法派遣になっている事実を無過失で知らなかったときには適用されません。詳しくは弁護士に相談されることをお勧めします。