北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
ネットで購入 商品が届かない-被害の回復難しく
2019.02.09
北日本新聞掲載 2019年2月9日
執筆者:山本篤広弁護士
先日、インターネットオークションで、個人が出品した服を落札しました。「銀行口座に代金を振り込めば、その日のうちに発送します」というメールが来たので、指定の口座に代金3万円を振り込みました。1週間たっても商品が届かないので、出品者に問い合わせましたが、電話はつながらず、メールの返信もありません。どうやったら代金を取り戻せますか?
出品者は、最初からお金をだまし取る目的で出品したのでしょうか。それとも不測の事態が生じ、連絡が取れなくなっているだけなのでしょうか。
いずれにしても、支払ったお金の返還を求めるためには、契約の相手方に対し、相当期間を定めて商品を送るよう催促し、期間を過ぎても届かなければ契約を解除する旨の意思表示をする必要があります。出品者の意図を確認するためにも、まずは出品者に、これらを記載した書面を内容証明郵便で送ってください。
出品者に郵便を出したのに、宛先不明だった場合や、出品者が受取拒否または受け取ったのに返事をしない場合、自主的にお金を返してもらうことは困難です。このような人から、強制的にお金を取り戻すためには、民事訴訟を起こし、判決によってその人の財産を差し押さえる必要があります。しかし、3万円の回収のためにこれらの手続を行うのは、費用や労力、時間などのコストが割に合わないでしょう。
このような場合、警察に出品者とのやり取りが分かるもの(メールの内容、代金の振込先など)をそろえて、詐欺罪として被害届や告訴状の提出を検討されてもよいかもしれません。他にも同様の被害届が出ている場合、警察の捜査が進む中で、相手が刑事処罰を避けようとして、自主的に返金してくれるかもしれません。
また、オークションサイトの事業主に経緯を報告することも重要です。事業主によっては、補償金支払い制度を設けていることもあります。
残念ながら、一般的に被害額が少額の場合、回収するための費用の方が大きくなり、泣き寝入りとなることが多いのが実情です。また、刑事事件として立件するのは容易ではありません。重要なのは、取引前に十分注意して、被害を予防することです。
相手の住所や事業所が実在する場所にあるのか、相手が長期間オークションの取引を行い、利用者の評価が平均以上であるのか、商品到着までオークション開設者がお金を預かるシステムが設けられているか、補償金支払い制度があるか、といった事項は最低限確認すべきでしょう。
厳しい現状をお伝えしましたが、そうは言っても、被害に遭ったときには初めから諦めずに、弁護士や消費生活センターに相談してください。「188(いやや)」に電話をかければ、近くの消費生活相談窓口に案内されます。