北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
兄の死後半年 相続放棄したい-例外的にできる場合も
2019.04.13
北日本新聞掲載 2019年4月13日
執筆者:志田祐義弁護士
30年以上音信不通の兄が60歳で亡くなりました。生涯独身で子どももなく、私が唯一の相続人ということでした。その日暮らしの生活をしていたため、財産は何も残していませんでした。ところが先日、兄にお金を貸していたという業者から、私が相続人であるとして、200万円を請求されました。兄が亡くなって半年経過していましたが、借金のことはこの時初めて知りました。今からでも相続放棄はできますか?
相続放棄をすると、不動産や預貯金などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も、一切受け継がないことになります。原則として、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に相続放棄を申し立てなければなりません。3カ月の期間を過ぎたり、その期間内でも相続財産を処分したりするなど一定の事由があると、単純承認したとみなされ、プラスもマイナスも一切の財産を相続することになります。
ただ、これには例外があります。相続人が相続財産の有無を調査することが極めて難しいという事情があり、さらに相続財産が全くないと信じることに相当な理由がある場合です。この場合、相続人が相続財産の存在を認識した時、または認識可能な時期から、相続放棄ができる3カ月の期間をスタートさせるという趣旨の最高裁判所の判決があります。
ご相談の件では、お兄さんが亡くなってから半年たっています。財産を何も残していないと思ったということですので、借金を請求された時を起点に計算すれば、まだ相続放棄ができる可能性があります。
もっとも、死後半年が過ぎているので、詳しい事情を調査し、証拠も用意する必要があります。相続放棄の手続は弁護士に依頼するか、少なくとも相談することをお薦めします。