北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
亡くなった養親と離縁したい-家庭裁判所に申し立て
2019.07.13
北日本新聞掲載 2019年7月13日
執筆者:鍋谷博志弁護士
十数年前にある夫婦と養子縁組し、最近、養父が亡くなりました。その後、養母との折り合いが悪くなり、協議離縁したのですが、養父との養親子関係が残っているため、戸籍上は養親の姓のままです。どうすれば元の姓に戻ることができますか。また、元の姓に戻った場合、相続した養父の財産を養母だった人に返さなければなりませんか。
養子縁組すると、養子は養親の性(法律では「氏」と言いますが、本欄では便宜上「性」を使用)になり、離縁すると養子縁組前の性に戻ります。養親夫婦の両方と養子縁組をしている場合、一方と離縁しただけでは、もう一方との養親子関係が残っているため姓は変わりません。
また、養子縁組の当事者の一方が死亡しても、養親子関係は消滅しません。あなたが養母と協議離縁しても、亡くなった養父との養親子関係が存続しており、養親の姓のままです。あなたが元の姓に戻るためには、亡くなった養父とも離縁する必要があります。
養親または養子のどちらかが既に死亡している場合、残された当事者は、家庭裁判所の許可を得て離縁することができます。これを「死後離縁」と言います。
まず、家庭裁判所に死後離縁の許可を申し立てます。認めるかどうかの基準は法律や規則に定められておらず、裁判所が、死後離縁する理由、当事者やその親族の利益といった諸事情を考慮して判断します。
家庭裁判所で死後離縁が許可されても、それだけで離縁が成立したことになりません。許可が確定した後、市区町村に死後離縁の届出を行い,そこで初めて効果が発生します。
養子縁組した場合、養親と養子の間には法律上の親子関係が発生し、これに伴って養子と養親の親族(血族)との間にも親族関係が発生します。死後離縁をすると、亡くなった養親の親族との間の親族関係も消滅します。
なお、既に発生した養親の相続が死後離縁によって影響を受けることはありません。従って死後離縁をしても、あなたが養父の相続人ではなくなったり、養父から相続した財産を失ったりすることはありません。