北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
経営者保証ガイドラインについて知りたい-借り入れ時にメリット
2019.09.14
北日本新聞掲載 2019年9月14日
執筆者:大原弘之弁護士
経営する会社が銀行融資を利用するとき、社長の私が当然会社の連帯保証人になるものと思っていましたが、最近、中小企業でも社長が連帯保証人にならずに融資を受けられる場合があると知りました。「経営者保証に関するガイドライン」に定めてあるそうですが、それはどういったものですか?
経営者が会社の借り入れの保証人となるいわゆる「経営者保証」は、わが国の銀行融資の場面で広く行われてきました。会社が返済できなくなったとき場合、経営者は会社の財産だけでなく、自宅の土地建物などの個人財産も失います。
このような重い負担は、思い切った事業展開や事業再生の妨げになりかねないと指摘されてきました。そこで、これらの問題を解決し、中小企業の活力を引き出すために、日本商工会議所と全国銀行協会の共通の自主的ルールとして「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。法的拘束力はないものの、企業、経営者、金融機関が自発的に尊重することが求められています。
このガイドラインでは▽経営者の保証なしでも新たに融資が受けられる▽借り入れに付いていた経営者の保証を外してもらえる▽返済できなくなったときでも、経営者の「華美でない」自宅や一定の生活費などに充てる財産を残せることがある-などのメリットを定めています。
では、どのような場合に、このメリットが受けられるのでしょうか。
経営者の保証なしに新たに借り入れをしたり、既にある借り入れに付いていた経営者保証を外してもらおうとするときは▽会社と経営者の財産が別のものとして管理されている▽会社にしっかりした財産があり業績も堅調である▽会社や経営者の財産の状況をきちんと説明する-ことが求められます。
また、債務整理の段階で経営者の保証債務も整理しようとするときには▽融資を受けた金融機関に対して借金も含めた財産の中身を開示している(誠実性・透明性)▽会社が裁判所を通じた債務整理手続や私的整理ガイドラインなどの準則型私的整理手続を同時に行っている(公正性)▽経営者が破産手続を取ったときに受けられる配当よりも金融機関が多くの回収が得られる見込みがある(経済合理性)-ことが求められます。
経営者保証に関するガイドラインのメリットを受けようとするときは、これらの条件を満たしていることを、金融機関に丁寧に説明していくことになります。早い段階で、弁護士や公認会計士、税理士など専門家のサポートを受けながら取り組んだ方がスムーズに進むと思われます。