北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

手術で後遺症 損害賠償請求できるか―過失との因果関係検討

2020.02.08

北日本新聞掲載 2020年2月8日

執筆者:春山然浩弁護士

私の家族が病院で手術を受けました。手術がうまくいかなかったのか、後遺症が残ってしまいました。病院に治療費や慰謝料などを請求できますか。

患者と病院の間には診療契約が成立するため、患者は病院に対して手術の内容や結果の説明を要求できます。また個人情報保護法などに基づき、診療記録の提供を求めることもできます。

今回の後遺症のように悪い結果が生じた場合について、基本的には①病院に落ち度(過失)があり②損害(治療費や慰謝料)が発生していて、かつ②が①のために発生した(因果関係)ケースに限って損害賠償を請求できます。後遺症が生じても、当然のように損害賠償請求ができるわけではありません。

手術に関する落ち度の例としては「手術中に間違った操作をした(手技上の過誤)」「その手術の実施が認められる条件がないのに手術をしてしまった(適応違反)」などがあります。

しかし、手術は絶対安全ではなく何らかの危険を伴うのが通常で、悪い結果が全て落ち度のせいだとは言えません。損害賠償の請求については、診療記録を検討し、別の医師に意見を聴いたり文献を調べたりした上で、病院に落ち度があると言えるのか、悪い結果が落ち度のために生じたと言えるのかを熟慮する必要があります。

手術自体に落ち度はなくても、後遺症が発生し得るとの説明を受けていなかった場合(説明義務違反)は,自己決定権侵害として慰謝料などを請求ができる可能性があります。ただし,説明すべき後遺症はある程度の確率で生じるものに限られ、説明の有無や説明の内容については証拠による裏付けが問題になります。加えて,どこまでの損害について請求が可能か検討しなければなりません。

いずれにせよ、悪い結果にどうしても納得できないということもあると思います。そのような場合、弁護士は、診療記録を基に専門の医師の意見を聴くなどして、避けられない不幸な事故だったのか,それとも病院に落ち度があったのかを調査できます。そして,落ち度があると判断された場合には,病院への請求についてアドバイスします。まずは弁護士に相談をしてみてはいかがでしょうか。