北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
高齢で判断力が低下したら財産管理は?―他人に委ねる制度検討
2020.03.14
北日本新聞掲載 2020年3月14日
執筆者:山本篤広弁護士
妻が亡くなり,現在1人で暮らしています。身近に相談できる親族や知人はおらず,私が高齢になり,判断ができなくなったとき,財産をどう管理すればいいのか心配です。成年後見制度に関心があります。今からどのように準備をすればいいのか,教えてください。
高齢になったり,何らかの障害を抱えたりして,判断能力が低下した場合,自分一人では財産をしっかり管理できなくなる恐れがあります。必要のない物を高額で買わされたり,大切な物や不動産を安価で買いたたかれたりすることもあります。
このような事態を避けるには,財産の管理や処分を法律にのっとって他人に委ねることが考えられます。
このような制度として①成年後見,保佐,補助②任意後見契約-が考えられます。
①は本人や4親等内の親族などが家庭裁判所に申し立てることで,本人の判断能力の程度に応じて成年後見人,保佐人,補助人のいずれかが選任され,その人が本人の全部,または一部の財産の管理や処分を行う制度です。
成年後見人は(場合によっては保佐人,補助人も)本人が不利益な契約を結ばされた場合には,本人の意思表示を取り消すことができます。
また,成年後見人が預金口座の払い戻しに関与することで,本人が多額の預金をだまし取られるといった被害を未然に防ぐことが可能になります。
②は本人の判断能力がまだ十分なうちに,本人と後見事務をしてもらいたいと思う人との間で契約を結んでおくものです。この契約は慎重を期するため,公正証書によって取り交わす必要があります。
本人の判断能力が不十分になった場合,本人や任意後見の受任者や4親等内の親族などが,家庭裁判所に任意後見監督人を選任する申し立てを行います。その後,家庭裁判所が選任することで,任意後見契約の効力が発生します。この制度においても,家庭裁判所は任意後見監督人を通じて,不適切な財産管理が行われないよう関与します。
任意後見の制度は本人が契約により,任意後見人となる人や代理権の範囲を決めることができる点で,本人の意思がより尊重されると考えられています。
もっとも任意後見人には,①のような取消権がないことに留意しなければなりません。また,効力発生後,当初定めた代理権の範囲内で本人の財産が守れない場合は成年後見に移行します。
以上が成年後見,保佐,補助及び,任意後見の大まかな概要です。自分の状況や要望に応じ,適切な制度を選択しましょう。早めに準備をしておくことが,トラブルの予防になります。