北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
DV被害の支援策は?―相談センター・警察に連絡
2020.05.09
北日本新聞掲載 2020年5月9日
執筆者:谷口恭子弁護士
夫の暴力,いわゆるドメスティックバイオレンス(DV)が原因で,子どもを連れて家を飛び出しました。今は友人の家で暮らしていますが,ずっとここにいられるわけではありません。どのような支援策があるのか,教えてください。
暴力はたとえ夫婦間であっても犯罪であり,決して許されるものではありません。「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」いわゆるDV防止法はあなたを守る手段を講じています。
まずは配偶者暴力相談支援センター(県内では県女性相談センター,高岡市男女平等推進センター),警察署に相談しましょう。支援センターでは,自立支援のための方策や避難場所の確保の相談ができます。
配偶者があなたの居住先を見つけて訪ねてくるのでは,と不安になると思います。あなたが裁判所に申立て,さらなる暴力の恐れが大きいと裁判所が認めた場合,配偶者に対し,あなたやお子さん,親族への接近,連絡などを禁止する命令を出します。あなたが引っ越しの際に家財道具を運び出す際,配偶者に家からの退去を命じることもできます。これを保護命令といいます。
保護命令の申し立ての前には,支援センターや警察署に相談する必要があります。保護命令は効力が大きく,違反した場合には逮捕されたり,処罰されたりします。
身の安全を確保できたら,今後の夫婦関係を考えてください。離婚を望む場合,調停や裁判を行います。裁判所は,あなたと配偶者が顔を合わせなくてもよいようにするなど安全確保に配慮し,秘密を保持します。お子さんの心のケアも必要です。
配偶者の暴力に対しては,民事では慰謝料の請求,刑事では被害届の提出や告訴が考えられます。
自治体も,希望に応じて,住民票の閲覧制限や児童手当の受取人変更,お子さんの転校手続など,配偶者があなたやお子さんに関わらなくするための配慮をしてくれます。
政府は新型コロナウイルスの緊急経済対策として,国民1人当たり10万円の給付金を支給します。これを避難先で受け取る場合,現時点の制度では,保護命令が出されていること▽配偶者暴力相談支援センターなどが確認書を発行していること▽住民票の閲覧制限などの支援措置の対象であること-のいずれかが必要です。
関係機関と連携を取りながら,一連の手続を迅速に行っていくためには,専門家の力を借りることができます。弁護士への速やかな相談をお勧めします。