北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

治療費打ち切り賠償額に不満-医学的な証明必要

2020.08.08

北日本新聞掲載 2020年8月8日

執筆者:深水信行弁護士

3カ月前に交通事故に遭い、治療を続けています。しかし相手の保険会社から、以後の治療費は支払えないと言われました。まだ痛みやしびれといった症状があり、治療を続けたいと思います。示談の案も示されたのですが、損害賠償額が低く納得できません。どのようにしたらよいでしょうか。

まず「まだ痛みや症状があり、治療を続けたい」「担当医が治療を継続したほうが良いと言っている」などと、治療の継続を希望していることを主張する必要があります。

レントゲン写真やCT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像装置)の画像などにより、治療継続の必要性を医学的に示すことができれば、引き続き治療費を払ってもらいやすくなります。

明確に異常を示すことができない場合は症状に応じ、必要な検査を受けてもらうことになります。検査で異常が認められた場合、治療継続が認められやすくなります。

もっとも損害賠償実務では、治療費が支払われるのは治療をすればよくなる可能性があるときに限る、とされています。

これ以上治療をしても症状がよくなる見込みがない「症状固定」と判断された場合は、画像や検査で異常所見があったとしても、治療費の支給は受けられません。「症状固定」は医学上の概念ではなく、労災や損害賠償実務における考え方です。

後遺症が生じた場合、後遺症の慰謝料と、後遺症による将来の収入喪失を請求できます。治療終了後に後遺症が残っていることが条件で、後遺障害等級の認定を申請します。認定の可否や認定等級によって、賠償金額は大きく異なるので、後遺障害診断書をはじめとする申請書類は正確に記載しなければなりません。

最後に賠償金額の計算基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」の三つの基準があります。後の基準ほど高額になることが多いのですが、自動車損害賠償責任保険においては、保険金請求者に7割以上の過失がない限り、過失相殺がされないなどの利点があります。

あなたが弁護士を選任しない場合、交渉は「任意保険基準」を基に進むことが多いのですが、弁護士を代理人とした場合、「裁判基準」によって請求するのが原則となります。有利な賠償金を得るにはどのような請求をすればよいのか、一度弁護士に相談されることをお勧めします。