北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

イラスト画をSNSに掲載してもいい?-著作権侵害に当たる

2020.10.10

北日本新聞掲載 2020年10月10日

執筆者:吉川美保弁護士

先日、イラストレーターのXさんの個展で、原画や複製画を数枚購入しました。作品の良さを知ってもらうため、作品のうち特に好きなもの数枚を鮮明にスキャンし、私のSNSに掲載したいと思います。草花の写真をSNSに掲載するのと同じように考えているのですが、問題ないでしょうか。

イラストは「美術の著作物」(著作権法2条1項1号)に当たり、スキャンしようとしているイラストの著作者はXさんです。

著作者は、著作権法上、著作物を複製する権利を独占している(同法21条)ので、著作者の許諾を得ないスキャン(複製)は、家庭内でご自身だけが楽しむ場合などの例外を除き、原則として複製権侵害(著作権侵害)に当たります。

また、これをSNSに掲載することは、一定以下の画素数にするなどの措置を講じたインターネットオークションの商品紹介画像のような例外(同法47条の2参照)にも当たらず、著作権のうちの公衆送信権(同法23条)の侵害(著作権侵害)になります。

従って、このイラストをスキャンしてSNSに掲載することは、著作権侵害に当たります。

著作権侵害をしてしまった場合、民事上の請求としては、損害賠償請求などを受ける恐れがあります。また、故意による著作権侵害は犯罪で、刑事罰を受ける場合もあります。

仮に、このイラストがSNSに掲載されれば、閲覧者は画像を購入することなく無償で鑑賞できることになるので、本来であれば著作者に支払われるべき対価が支払われず、著作者が損害を被ることになります。加えて、画像データがインターネットに掲載されることで、閲覧者が別の場所に転載をしてさらに損害が拡大する恐れも考えられます。

作品の良さを広く知ってもらいたいという善意の行為であったとしても、Xさんにとっては職業生活に悪影響を生じる一大事です。相談者であるあなたに対して法的手段を取らざるを得ない、という不幸な事態ともなりかねませんので、やめておきましょう。