北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

無料広告なのに請求受ける-契約内容と取引条件確認

2020.11.14

北日本新聞掲載 2020年11月14日

執筆者:佐藤大樹弁護士

私は会社の労務担当です。「無料でインターネットに求人広告を載せられる」と聞いて掲載を依頼したのですが,何十万円もの広告料の請求を受けました。どうすればよいでしょうか。

2019年ごろから,個人事業主や小規模な会社の無料求人広告を巡るトラブルが増えています。

背景にあるのは,事業活動の一環で締結した契約に「消費者」が交わす契約と同じ保護が及ばないことが挙げられます。消費者であれば,取引相手が不利益な契約条件を隠していた場合などに,契約を取り消すことができます。さらに,一定期間内であれば理由なく契約を取り消すことができる「クーリングオフ」を適用できる場合もあります。

無料求人広告トラブルになったケースでは,広告業者から営業の電話がかかってくる→後日,ファクスやメールなどで申し込みを行う-という流れで契約を締結することが多いようです。その契約で①無料期間が過ぎたら高額な有料契約に自動的に切り替わる②中途解約ができない③中途解約ができるものの高額な違約金が定められている-ことなどにより,数十万円の高額請求を受けた事案も報告されています。

昨今の人手不足もあり「無料でインターネット上に求人広告を掲載できる」と聞くと,ついつい「無料ならいいか」と安易に契約してしまうこともあるかもしれません。しかし,広告業者の説明をうのみにせず,申し込む前に利用規約をよく読んで,契約内容,取引条件をしっかり確認しましょう。

もっとも,広告料の請求を受けた場合であっても,対処の方法はあります。広告業者が無料であることを強調し,高額な広告料が発生することを説明しなかったり,その説明部分だけ文字を小さくしたりしていることがあります。こういった場合は,錯誤や詐欺との主張により支払を免れることが可能かもしれません。

また,広告業者が求人広告をネット上に掲載していなかったのであれば,債務不履行(約束違反)の主張があり得ます。また「有料で広告を掲載することは依頼していない」として有料部分の契約不成立の主張もできるかもしれません。

数十万円の請求ですから,わざわざ裁判を起こさない広告業者が多いようですが,中には弁護士をつけて裁判を起こす業者もあるようです。高額請求を受けて不審に思った場合は,すぐに支払わず,なるべく早く弁護士に相談してください。