決議文・意見書・会長声明

国選弁護制度の基礎報酬の大幅増額及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

2026.06.24

いわゆる袴田事件、福井女子中学生殺人事件と相次いで再審無罪判決が出され、プレサンス事件や大川原化工機事件は冤罪事件であることが明らかとなった。また、佐賀県警察科学捜査研究所職員によるDNA型鑑定での不正行為や茨城県警察によるDNA型鑑定試料の取り違え等、警察捜査の不祥事が次々に発覚している。これらの事案は、我が国の刑事司法手続における弁護人の活動が極めて重要であることを浮き彫りにするものである。
 我が国の刑事裁判は、重大事件を含めその大半が国選弁護人によって担われている。「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」(法務省設置)が2025(令和7)年7月に取りまとめた報告書によれば、近年では9割近い被疑者が捜査段階において国選弁護人の選任を請求し、ほぼ全ての事件において24時間以内に国選弁護人が指名されている。国選弁護制度は、市民の弁護人依頼権という重要な基本的人権(憲法37条3項)の保障を担保する制度であり、国選弁護活動の充実は、適正・迅速な刑事裁判を実現し、被疑者・被告人の権利を十全に保障するために必須のものである。
 しかしながら、国費で賄われる国選弁護人に対する費用は、近年の物価高騰等の諸事情にかかわらず長年にわたり極めて低い水準で維持されてきた。

また当会では、従前より当番弁護士制度を運用し、近年では罪に問われた障がい者等に対する刑事弁護費用等の援助制度や取調べ立会いの援助制度等を創設して、時代の変化に伴って高度化・複雑化する刑事弁護活動を行うための体制の拡充に注力してきた。
 しかしながら、これらは当会会員からの会費等を原資とする独自の予算で運用されており、その財源にはおのずと限界がある。そもそもこれらの措置は、無罪推定の原則が憲法上保障される我が国にあっては、本来は全て国費によるべきものである。

しかるに、国選弁護業務のための予算は160億円前後と極めて僅少な額で推移しており、膨張を続ける120兆円規模の国の一般会計予算に占める割合も年々低下してきている。国選弁護制度の経済的基盤を拡充することは、基本的人権の保障と直結するものであるにもかかわらず、国の対応は著しく立ち遅れているというほかない。
 よって、当会は、被疑者・被告人の権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等の関係諸機関に対し、国選弁護制度の基礎報酬の大幅増額及び各種弁護費用の抜本的改善を求めるものである。

2026(令和8)年6月23日
富山県弁護士会 会長 鍋 谷 博 志