決議文・意見書・会長声明
特定秘密保護法の施行に反対し廃止を求める会長声明
2014.11.28
政府は去る10月14日,特定秘密の保護に関する法律(以下「本法」という。)の施行令及び運用基準等を閣議決定し,本法の施行期日を12月10日とした。
しかし,当会が本法の法案段階で会長声明(2013年10月30日付)を発し, 強く指摘したとおり,本法は,国民主権,基本的人権の尊重という日本国憲法の基本原理に逆行し,国民の権利自由を不当に制約するものである。したがって,当会は本法の施行に強く反対し,本法の廃止を求める。
本法は,「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿をすることが必要であるもの」を「特定秘密」とし,行政機関の長が,①防衛,②外交,③特定有害活動防止,④テロリズム防止の4分野で「特定秘密」を指定することとし,これを漏らした者に重罰を科すものとなっているが,保護対象となる「特定秘密」の範囲が,本法の別表及び運用基準を総合してもなお,広範かつ不明確である。そのため,行政機関の長の恣意的な判断で「特定秘密」の指定がなされ,本来国民に開示されるべき情報が統制・隠ぺいされる危険性が大きい。
そのうえ,特定秘密が最終的に公開される制度的担保はなく,多くの特定秘密が国民の知らないうちに破棄される可能性がある。
処罰範囲も,過失による漏えい行為のほか,漏えい行為の未遂や共謀,独立教唆及び煽動,ならびに「特定秘密」の取得行為とその共謀,教唆,煽動を処罰対象とする点で極めて広範であって,刑罰の萎縮的効果にかんがみれば,報道や取材の自由等を侵害する危険性が大きい。
また,本法は,適性評価を経た者に「特定秘密」の取扱いをさせることにしているが,この適性評価制度では,通常他人に知られたくない個人情報も調査対象となり,プライバシーや思想・信条の自由等の侵害の危険性が大きい。
本法はこのように,国民の知る権利などの基本的人権および国民主権原理に深刻な影響を及ぼし,問題点を多々有する。これらの問題点は,法案段階から存する本法そのものの欠陥である。
しかも,本法の立法に際しては,本法を必要とする具体的事情(立法事実)の存在が必要不可欠であったところ,政府が例示する過去の情報漏えい事案については再発防止のために必要な対策が既にとられていたのであり,罰則強化や人的管理を内容とする立法の必要性を基礎づける具体的事情は見出せない。
そもそも本法は,その制定過程において,国民的な議論が尽くされていない。本法の制定後,本法の施行令(案)及び運用基準(案)等についてのパブリックコメントが募集され,8月24日の締切までに2万3820件もの意見が寄せられた。政府にとっては,国民からの指摘を受けて本法の問題点を検討する良い機会であったはずである。しかし,10月14日に閣議決定された施行令及び運用基準等は,素案段階からほとんど変わっていない。
よって,当会は,本法の施行に強く反対し,本法の廃止を求めるものである。
2014(平成26)年11月26日
富山県弁護士会 会 長 島 谷 武 志