北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
突然解雇を言い渡された-緊急時は仮処分が有効
2024.11.13
北日本新聞掲載 2024年10月12日
執筆者:伊藤 建 弁護士
勤務先から突然解雇を言い渡されました。残業もしていますが、会社は残業代を支払わなくてもいいと決まっていると主張しています。どうすればよいでしょうか。
労使関係の紛争を解決するためには、会社と交渉する以外にも、労働局や労働委員会によるあっせん、裁判所による民事調停、労働審判、裁判、仮処分などのさまざまな方法があります。
あっせんは労働問題の専門家が調整するものです。費用がかからないというメリットがありますが、解決案を強制できません。民事調停も強制力はありません。
労働審判、裁判、仮処分の特徴は強制力があるということです。
解雇により生活できなくなるような緊急の場合、仮処分が有効です。「解雇は無効」と主張し、「賃金を仮に支払え」と求めることができます。ただし、これにより得られた賃金はあくまでも仮のものです。本来は、後に裁判をしなければなりませんが、仮処分命令後に交渉で和解することもあります。
裁判を起こすと、多くの場合、解決までに1年以上かかります。判決で解雇が無効となれば理屈上は、裁判中の期間に支払われるはずだった賃金を受け取ることができます。しかし裁判は当事者の負担も大きいです。そのため早期の解決を目指す場合には、労働審判も検討に値します。
労働審判は裁判官に加えて、労働者側、使用者側の労働審判員の3人で審理します。多くの場合、3カ月以内に解決します。強制力がある一方で、労使双方の視点を踏まえた解決が可能であり、あっせんと裁判のいいとこどりをした制度といえます。
残業代の支払いを限定する制度はありますが、正しく運用されていない場合、通常通りの計算で残業代が認められる可能性もあります。まずは一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。