北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

DV防止法改正のポイントは?-精神的DVも対象に

2024.07.13

北日本新聞掲載 2024年7月13日

執筆者:弁護士 堀岡 和正

DV防止法が改正されたと聞きました。改正のポイントを教えて下さい。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」 が改正されました。2024年4月1日に施行されました。

配偶者(事実婚の相手や元配偶者も含む)から暴力などがあった場合、被害者は裁判所に保護命令を申し立てることができます。保護命令はDV防止法に基づき、裁判所が相手の配偶者に対して、接近(つきまといや住居などの付近のはいかい)、電話等(無言電話や緊急時以外の連続する電話、FAXやメールなど)の禁止や、被害者と共にする住居からの退去などを命じるものです。

保護命令の対象は、身体に対する暴力や生命・身体に対する脅迫「身体的DV」の場合に限られていましたが、今回の改正により、「接近禁止命令等」については「自由・名誉・財産」に対する脅迫が加わりました。これにより例えば、従わなければ「仕事を辞めさせる」「性的な画像をインターネットで拡散する」「キャッシュカードを取り上げる」といった脅迫「精神的・経済的DV」により、うつ病などを発症した場合も、対象に含まれ得ることになりました。ただし「退去等命令」の対象は身体的DVに限られたままです。

このほか、「接近禁止命令等」の期間を6カ月から1年へ伸長▽「電話等禁止命令」の禁止行為について通信手段にSNSを含め、性的羞恥心を害する電磁的記録の送信やGPSによる位置情報の無断取得などを追加▽「子への電話等禁止命令」の新設▽退去等命令の期間(原則2カ月)を6カ月とする特例の新設-などの改正がされました。

保護命令違反の罰則も「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」へと加重されました。