北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
隣家の騒音なんとかしたい-自治体が指導や調停
2022.12.10
北日本新聞掲載 2022年12月10日
執筆者:弁護士 青島 明生
隣家からの騒音に悩まされています。夜になってくつろぎたいのに、大きな音が聞こえてきて落ち着けません。騒音規制法があると聞きました。なんとかならないでしょうか。
残念ながら騒音規制法は、工場や建設作業、交通騒音など事業活動に伴う騒音を規制するものです。隣家からのクーラー、ピアノ、足音、カラオケの音など生活騒音は対象外のため、これによって直接解決を図ることは困難です。
もっとも、生活騒音も対象にする公害防止条例を定めている自治体もあります。隣家との間に入って注意や要請をしてくれたり(行政指導)、公害調停として間に入ってくれたりする場合もあるので、自治体の環境問題担当部署に問い合わせてみてください。
多くの判例は、クーラーの室外機、ピアノやカラオケの音などの生活騒音は、人が生活する上で避けられないことや、社会生活上お互いさまの関係もあり、直ちに違法とは言えないとしています。一方で①騒音規制法の基準を超えているか(地域性や音の大きさなど)②騒音の人体に及ぼす影響、迷惑の程度③人的関係(相手への配慮や紛争解決のために払った当事者の努力など)の諸事情を考慮し、社会生活上我慢するのが相当と認められる限度を超える場合には、その行為は違法となり、損害賠償や行為の差し止めが認められるとしています。
これを踏まえ、まずは話し合い、それが難しければ自治体に行政指導や調停を依頼する、場合によっては簡易裁判所に民事調停を申し立てて解決を試みることをお勧めします。その際、騒音の状況、時間帯など、できるだけ記録を取るといいでしょう。騒音計を貸し出している自治体もあるので、ご活用ください。
騒音を指摘された側も、先の判例の③で挙げた人的関係の基準がありますから、できる限り誠実に話し合いに応じた方がよいことになります。
マンション、アパートなど集合住宅での騒音の場合、賃貸借契約上、大家さんや管理者は賃借人が平穏に利用できるように居室を提供する義務を負っており、建物の防音対策の不十分さが原因の場合もありますので、解決を申し入れてみることも有効です。