北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
亡くなった兄の借金払わないといけない?-相続放棄 3ヶ月以内に
2022.11.12
北日本新聞掲載 2022年11月12日
執筆者:弁護士 大原 弘之
兄が半年前に亡くなりました。ずいぶん長いこと音信不通で、兄が亡くなったことは、先週兄が住んでいたアパートの大家さんから聞きました。大家さんからは滞納していた家賃や部屋の片付け費用を支払ってほしいと言われています。兄にはサラ金からの借金もあるようです。自分たちの生活だけで精いっぱいで、兄の借金までとても支払えません。どうすればよいでしょうか。
お兄さんがご存命の間は、たとえ親兄弟であっても、法律的にはお兄さんの借金を払う義務はありません。亡くなった後は、まずお子さんと配偶者の方が最初の相続人になり、お兄さんの財産や借金はこの方々が相続することになり ます。
相続することを拒む制度もあり、これを相続放棄といいます。相続放棄は、自分のために相続があったことを知った時から3カ月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
お兄さんのお子さんと配偶者が相続放棄をされれば、次にあなた方のご両親が相続人となります。ご両親がすでに他界されているか、相続放棄をされれば、その次にあなたが相続人となり、お兄さんの財産や借金を相続することになります。
さて、お兄さんは半年前に亡くなったとのことですが、それを知ったのが先週ということなら、まだあなたが相続人になったことを知ってから3カ月以内ですので、相続放棄の申述ができ、あなたは初めから相続人でなかったものとみなされます。
ここで注意が必要なのは、お兄さんの財産を処分したり、隠したりしてはいけないということです。もし発覚したときには、相続放棄の効果がなくなることがあります(法定単純承認)。
また、相続放棄さえすれば何の義務も負わなくなるわけでもなく、相続財産の管理を始める者が現れるまでは、自分のものと同じ注意をもって管理する必要もあります。
3カ月の期間を過ぎても事情によっては相続放棄できる場合がありますので、諦める必要はありません。詳しくは弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。