北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
遺言書の相続内容は絶対?-遺留分は請求できる
2022.10.08
北日本新聞掲載 2022年10月8日
執筆者:弁護士 越後 雅俊
先日、父が他界しました。私と母と兄の3人が相続するはずでしたが、兄に全ての財産を相続させるという内容の遺言書が出てきました。私と母は何も相続できないのでしょうか。
原則として遺言書があれば、その内容に従って遺産が分配されることになります。ただ、亡くなった人の配偶者、子(子がいない場合には親などの直系尊属) には遺留分という権利があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に対して、法律上認められている最低限の取り分です。配偶者及び子が相続人の場合、遺留分は法定相続分の2分の1と定められています。今回の場合、お母様の法定相続分は2分の1、相談者は4分の1なので、お母様の遺留分は4分の1、相談者は8分の1となります。
お母様と相談者は、お兄様に対して遺留分侵害額請求権を行使し、遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができます。遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分が侵害されたことを知ってから1年、または相続の開始から 10年が経過した場合には、時効などによって権利が消滅してしまうので注意が必要です。
遺留分侵害額請求権を行使する場合の具体的な方法について定めはないので、まずは上記の遺留分額を前提として相続人3人で話し合いをされるのが良いと思います。3人が納得されるのであれば、遺言書の内容や遺留分額に縛られることなく、自由に取得額を定めることができます。協議しても解決できない場合には家庭裁判所で調停を行い、調停でも合意ができない場合には訴訟を起こす必要があります。なお時効期間が迫っている場合には、内容証明郵便で権利を行使する意思があることを明確にしておいてください。
今回は遺言書が有効であることを前提として回答しましたが、まずは遺言書が有効かどうかの判断が必要ですし、現金や預金以外の不動産や株式などの財産についてはその評価が問題となります。遺言書が見つかった場合には一度弁護士に相談されることをお勧めします。