北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
18歳成人 消費者被害が心配-慎重に契約 悩まず相談
2022.03.12
北日本新聞掲載 2022年3月12日
執筆者:谷口 央弁護士
19歳と17歳の子どもがいます。成年年齢が引き下げられるそうですが、いつから成年になりますか。また消費者被害が増えると聞き、子どもたちが被害に遭わないか心配です。
4 月1日から民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。1日時点で満18歳以上満20歳未満の人が一斉に成年となり、2日以降は満18歳の誕生日を迎えると成年となります。
成年年齢には「契約年齢」「親権の対象となる年齢」 の二つの意味があります。契約年齢は一人で契約できる年齢のことで、消費者被害との関係があるのはこちらです。未成年者が契約するには原則、親など法定代理人の同意が必要です。同意なく結ばれた契約は後から取り消すことができます。これを未成年者取消権と言います。
未成年者取消権は、判断力や社会経験に乏しい未成年者を保護するためのもので「後戻りの橋」「防波堤」などと呼ばれます。事業者は苦労して勧誘しても、後から取り消される可能性があるので、そもそも未成年者をターゲットとしません。こうして未成年者は、知らず知らず被害から守られてきました。
成年年齢の引き下げにより、18、19歳は未成年者取消権を失い、今後勧誘のターゲットとなります。マルチ取引やエステ・美容医療など、20歳代に多いトラブルに巻き込まれないか心配されます。
18歳だと高校在学中の人も多く、高校生の間にマルチ取引がはびこり、金銭の貸し借りや「いじめ」に発展する可能性もあります。卒業時には全員が成年になっており、進学、就職、転居など社会との接点が増え、消費者被害に遭う可能性はさらに大きくなります。
若者の消費者被害を防ぐために、学校だけなく、家庭や地域、社会全体で、若者や子どもたちへの充実した消費者教育を推進させることが求められています。
また、成年を迎える皆さんは、未成年者取消権がなくなることを理解し、慎重に契約をすることが大切です。トラブルに巻き込まれたら、一人で悩まず早めに市町村相談窓口や県消費生活センター、消費者庁が開設している全国共通の電話番号「消費者ホットライン188(いやや!)」に相談しましょう。