北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

母の預金を引き出していた兄-まずは使い道を確認

2021.10.09

北日本新聞掲載 2021年10月9日

執筆者:大橋弘輝弁護士

母が先頃亡くなりました。母の預金通帳は兄が預かっていました。兄は母の生前に多額のお金を引き出していたようなのですが、返してもらえますか。

高齢者の財産は、同居家族が管理することが多いです。一方、その内容や方法を明確にしておくことは多くありません。このため、亡くなった後で遺産を確認してみると、預金残高が同居していない相続人の予想よりも減っていることが少なくありません。あなたも同じように感じたのでしょう。

ただ、お兄さんが財産を使い込んだとは限りません。生活費や医療費、介護費などは、予想よりも多くかかることがよくあります。まずはお兄さんに預金をどんな目的で、いくらぐらい使ったかを確認し、裏付けとなる資料も出してもらいましょう。説明を受け、一通りの資料を出してもらえれば、預金残高とおおよそ合致するかもしれません。この場合は、お母さんの生計に多くのお金が必要だっただけで、お兄さんはきちんと財産管理していたといえます。

十分な説明がなされない、あるいは説明の内容が引き出された金額に遠く及ばないこともあり得ます。この場合は、お兄さんが使い込んだ可能性も考えられ、あなたが相続するはずだった金額分の支払いを求めることができます。交渉や訴訟を有利に進めるためには、銀行の取引履歴やお母さんの生活費、医療費、介護費等の状況が分かる資料を収集する必要があります。金銭管理をしていなかった人がこれらを集めるのは簡単ではありません。弁護士は資料収集やお金の請求を手伝います。

今回の相談とは逆に、今後あなたが親族の通帳を預かることがあるかもしれません。この場合は、他の人に管理状況を説明できるように用途と金額を記録します。支払時の領収証も取っておきましょう。可能であれば通帳の名義人と使い道について取り決めを交わし、文書にしておくとなお良いです。名義人の生活状況も記録しましょう。弁護士は、財産管理のアドバイスも行いますので、困ったときは相談してください。