北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
借金が返済不能に 住宅ローンも残る-三つの方法で債務整理
2018.06.09
北日本新聞掲載 2018年6月9日
執筆者:加藤 翔弁護士
5年ほど前に、生活費の不足分を埋めるため銀行のカードローンを利用してお金を借り、その後、消費者金融からもお金を借りました。これまで追加借り入れをするなどして返済していましたが、新たな借り入れができなくなり、先月から返済できていません。自宅に担保権が設定された住宅ローンもまだ残っています。どうすればよいでしょうか。
返済できないということは、毎月の返済すべき金額が、あなたの1カ月の家計において、借金の返済に充てることができる金額を上回っている状態ということになります。このため、家計の状況が今後も変わらない見込みなら、借金について何らかの対応策を取る必要があります。この対応策のことを債務整理といいます。
債務整理にはいくつかの方法がありますが、大きく分けると、返済条件の見直しを求める方法として「任意整理」と「個人再生」があり、返済不能を理由に債務の免責を求める方法として「破産」があります。
任意整理は、各債権者との個別の話し合いによって、返済可能な金額で支払月額を合意し直す方法です。基本的には、返済の対象を残元本のみとし、利息や遅延損害金を免除してもらうよう合わせて交渉します。
個人再生は、裁判所へ申し立てを行い、残元本の一部を含めて免除を受け、免除後の残額について原則3年間で分割返済する方法です。任意整理だけでなく個人再生でも、他に住宅ローンが残っている場合に、一定の要件を満たせば、返済を継続して自宅を持ち続けることが可能です。
対して破産は、返済不能の判断を前提に、裁判所の決定で債務を免責してもらう方法です。免責が認められれば借金がない状態で再スタートを切ることができます。ただし、破産決定時の資産のうち一定額を超えるものを手放す必要があります。
どの方法がよいか決めるには①あなたの借金の額と内訳②家計の収支を踏まえた1カ月の返済可能額③あなたの資産の内容-を把握することが大切です。その上で、月々の返済額を見直すことで、少なくとも残元金を3年ほどの分割払いによって返済可能であれば、まずは任意整理を検討します。
これに対し、3年から5年の分割払いでも残元金を返済できそうにない場合や、返済条件に同意しない債権者がいるような場合には、破産や個人再生を検討します。破産か再生かは、自宅など残したい資産の有無が一つの判断要素となるでしょう。
もっとも、債務整理には破産免責が認められない事情の有無や保証人の有無など他にも考慮すべき事情があり、適切な方法を一人で判断するのは簡単ではありません。お手元にある借金関係の資料を持って、一度早めに弁護士に相談することをお勧めします。