北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
新築住宅 約束と違う施行が判明-瑕疵担保責任を追及
2018.10.13
北日本新聞掲載 2018年10月13日
執筆者:西山貞義弁護士
業者と工事請負契約を締結し、住宅を新築したのですが、半年後に雨漏りが発生しました。原因を探るため、専門家に見てもらったら、木材はヒノキを使う約束だったのに、実際は使われていないことも分かりました。契約書や見積書などの書類を見返したのですが、ヒノキを使うことはどこにも書かれていませんでした。業者に法的対応を求めることはできますか?
工事を請け負った業者は法律上、「瑕疵」のない仕事を完成させる義務を負い、「瑕疵担保責任」という法的責任を負います。辞書では「瑕疵」とは、「欠点」「欠陥」とされています。
ささいな「欠点」でも瑕疵担保責任を追及できるわけではありませんが、雨漏りは明らかに法律上の「瑕疵」に当たりますので、業者に修理を請求したり、被った損害を賠償するよう請求したりすることができます。また、多くの業者は、瑕疵担保責任保険に加入しています。この保険は、「構造耐力上主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」に瑕疵がある場合に利用できますので、業者に保険金を請求させて、雨漏りを直すことも検討できます。
次に、ヒノキを使うと約束していたのに、使われていないという点ですが、「ヒノキを使う」ことが契約の重要な内容になっていれば、瑕疵担保責任を追及できます。逆に、契約の重要な内容になっていると言えない場合は、追及できません。
今回の場合は、契約書や見積書などにヒノキを使うことが全く書かれていませんので、「ヒノキを使う」ことが契約の重要な内容になっているかが争点になりそうです。「契約の重要な内容になっている」としっかり証明できるようにするため、重要だと考えることは必ず契約書や見積書、打ち合わせ記録などに明記してもらい、手控えをもらっておきましょう。
なお、ヒノキを使っていない点が瑕疵に当たるとしても、ヒノキを使って住宅を造り直すと多額の費用がかかりますので、裁判になっても、修理の請求は認められず、また、損害賠償請求でも、ヒノキと実際の材料の差額や若干の慰謝料程度しか認められない可能性があります。
瑕疵担保責任を追及できる瑕疵とは、原則として①建築基準法の安全に関する規定に違反する場合②契約の重要な内容に違反する場合、などとされています。また、法律で定められた期間を経過した場合は、原則として法的責任を追及できなくなります。判断が難しいので、建築問題で法的対応をお考えの場合は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。