北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
友人から保証人を頼まれた-可能な限り精査し慎重に
2021.07.10
北日本新聞掲載 2021年7月10日
執筆者:太田悠史弁護士
友人から,経営している会社で借り入れをしたいので,会社の取締役になってその借金の保証人になってほしいと頼まれました。取締役として何もしなくても,毎月会社から報酬を支払ってくれるとのことですが,大丈夫でしょうか。
保証人とは,本来の債務者(主債務者といいます)の借金を肩代わりしなければならない立場になるということです。一般に事業のための借入は多額に上ります。保証人としての支払いができない場合,不動産や預貯金,給与に対する強制執行を受けるなど,生活に多大な影響が出ることもあります。
リスクを十分に理解していなかったり,懇願され断り切れなかったりといった事情で保証人になり,生活に重大な影響を受けた人が,これまで少なからずいました。
このため2020年4月に民法が改正され,事業のための債務の保証人となる個人に対し,主債務者は経営に関する情報を提供する義務を負うようになりました。また公的機関である公証人による意思の確認も必要となりました。
一方,改正後も,主債務者となる会社の経営状況を把握できる立場にあるなど一定の場合は,リスクの重さも理解できるという理由で,公証人による意思確認は不要とされています。
あなたの場合,会社の取締役に就任して保証人になることをお願いされています。会社の経営状況を十分に理解している人物として,公証人による意思確認なしで保証人となることになります。
しかし,得てして会社の経営状況というのは,外から見ているだけでは正確なことは分かりません。本当に保証人になることを検討するのであれば,どのような趣旨でいくら借りるのかを確認するのはもちろん,最低でも会社の経営状況について正確な情報を提供してもらい,その内容を精査すべきです。
また,取締役に就任すれば経営に関する監視義務を負いますので,その義務に反したとして責任を問われることもあり得ます。
多額の債務を負い,自身の生活に取り返しのつかない影響が出るリスクがあることを理解し,受け取る報酬がそういったリスクを踏まえた対価として妥当なものか,慎重に考えた上で結論を出すことをお勧めします。