北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』
養育費算定表の改定ポイントは-おおむね増額傾向
2020.07.11
北日本新聞掲載 2020年7月11日
執筆者:加藤 翔弁護士
昨年末、離婚後に払う子どもの養育費や、別居中の夫婦の一方が生活費に充てる婚姻費用の算定表が改定されたと聞きました。どのように変わったのでしょうか。
最高裁判所は昨年12月、養育費や婚姻費用を決める際に使う算定表の改定版を公表しました。2003年に初めて算定表を発表してから、16年ぶりの改定です。
養育費とは、離婚した両親のうち、子を監護しない親が監護する親に対し支払う、子どもを育てていくための費用です。婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送る上で必要となる費用です。主に別居中の夫婦間で、一方が他方に生活費の支払いを求める場合に問題となります。
養育費、婚姻費用を月いくらにするかは、双方が話し合って決めるのが基本ですが、話し合いがまとまらないときは家庭裁判所に決めてもらうことになります。日々の生活に必要な費用ですから、簡易かつ迅速に算定する必要があり、養育費、婚姻費用の算定表が発表されました。
算定表を使えば、双方の収入額と子の人数、子の年齢(0〜14歳と15〜19歳の2区分)を当てはめることで、標準的な額の範囲を導き出すことができます。
算定に当たり、双方の収入額を用いるのは、養育費、婚姻費用ともに双方の収入に応じて分担すべきものだからです。また、子の人数や年齢が考慮されるのは、それによって子の養育に必要な金額が変わってくるためです。
今回の改定により、双方の収入額と子の人数、年齢から標準的な金額を出すという基本的な考え方に変更はありませんが、算定表の金額を出すときに使っている税法の税率や家計に関するデータを最新のものにアップデートしました。その結果、算定表の金額が変わりました。
では、今回の改定で算定表の金額はどう変わったのでしょうか。改定算定表に基づく金額は改定前と比べ、おおむね増額傾向にあるといえます。
例えば、子を監護しない親の年収が500万円、監護する親の年収が300万円、10歳の子が1人いるというケースでみると、その標準的な養育費は、改定前の算定表によると月2〜4万円であるのに対し、改定後の算定表によると月4〜6万円となります。
改定算定表の利用はすでに家庭裁判所で始まっています。なお、算定表は、あくまで標準的な金額の範囲を示すためのものであり、最終的な金額は個別の事情も考慮して決められることに注意が必要ですが、一つの目安となることは確かです。改定された算定表は、裁判所のホームページで見ることができます。