決議文・意見書・会長声明

事前拒否者に対する訪問や電話による取引の勧誘を禁止する制度の導入を求める会長声明

2015.07.23

消費者からの要請なしに行われる訪問や電話による取引の勧誘(訪問や電話による不招請勧誘)は、私生活上の平穏を害し、消費者にとってそれ自体が迷惑な場合が多い。一般社団法人全国消費者団体連合会が2015年2月に行った調査では、訪問や電話による不招請勧誘を「迷惑と感じる」との回答が、全体の96.3%に達している。また、訪問や電話による不招請勧誘は、不意打ち的で一方的な勧誘になりがちである。このため、事業者と消費者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差がより顕著となり、消費者が不本意な契約を締結させられることも少なくない。特に、自宅にいる機会が多い高齢者が、訪問や電話による不招請勧誘によって、意に反して財産を失うことを未然に防止すべき要請はきわめて高いといえる。

現行の特定商取引法においては、訪問販売・電話勧誘販売の取引類型について、契約を締結しない意思を表示した者に対する勧誘禁止の規定が置かれている。しかし、事業者の巧みな勧誘が始まってしまうと消費者が断ることは難しいのが実態であり、特に、高齢者等においては、そもそも拒絶意思を明確に表現することが困難な者も相当数存在する。また、勧誘の際に消費者が契約を締結しない意思を示したことを後から立証することは容易ではなく、実際にも拒否者に対する勧誘が行われる事例が多数報告されていることからすれば、これらの再勧誘の禁止の規定だけでは実効性が十分とは言い難い。

このような訪問や電話による不招請勧誘の問題点を解決するためには、Do Not Knock制度(訪問勧誘を受けたくない者が、戸口等に「訪問販売お断りステッカー」などで、勧誘を拒否する表示をし、その表示のあった住居等への勧誘を禁止する制度)やDo Not Call制度(電話勧誘を受けたくない者がその電話番号の登録を行い、これをリスト化し、登録された番号への電話勧誘を法的に禁止する制度)を導入し、これらの制度によって消費者が事前に包括的な拒絶の意思を示した場合には、訪問や電話による不招請勧誘を禁止すべきである。そして、訪問販売業者及び電話勧誘販売業者が、これらの制度による禁止行為に違反した勧誘を行い契約に至った場合は、行政処分や罰則の適用を行えるようにするほか、規制の実効性を確保するために、消費者に対し、規制違反の勧誘によって締結された契約の取消権または解除権を付与すべきである。

このようなDo Not Knock制度やDo Not Call制度の導入に対しては、事業者の営業の自由を侵害するものであるとして、反対する意見もある。しかし、事業者の営業の自由も、人が嫌がることを行うことを正当化するものではありえない。また、上記各制度は、あらかじめ拒絶の意思を表明した消費者に対する訪問や電話による勧誘のみを禁止するものであり、他のチャネルによる営業活動(消費者から承諾を得て行う勧誘、勧誘を拒絶しない者に対する勧誘、訪問・電話以外の方法による勧誘)を規制するものではない。さらに、現行の特定商取引法においても、通信販売業者などによる電子メール広告の送信については、「事前の同意がある場合にのみ送信ができる」というオプトイン方式を採用しており、これとの比較においても、上記各制度の導入が、事業者の営業の自由に対する過剰な規制にあたることはない。

以上により、当会は、訪問販売及び電話勧誘販売の取引類型について、事前拒否者に対する取引を禁止する制度である、Do Not Knock制度及びDo Not Call制度を導入することを強く求める。

 

2015(平成27)年7月22日

富山県弁護士会 会長 水谷 敏彦