決議文・意見書・会長声明

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

2015.02.05

経済産業省及び農林水産省は、2015年(平成27年)1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下、「本省令」という。)を定めた。

当会は、2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則案に対し、同月23日付会長声明において、これに反対する意見を表明した。本省令は、当初の公表案を若干修正し、同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に、顧客が65歳未満で一定の年収若しくは資産を有する者である場合に、顧客の理解度を確認するなどの要件を満たした場合を例外とする規定を、不招請勧誘の禁止の例外として盛り込んだものである。

しかし、上記の要件を満たすかどうかの顧客の適合性の確認は、勧誘行為の一環としてなされるものであるから、結局、商品先物取引契約の締結を要請していない者に対して、商品先物取引業者が電話や訪問による接触・勧誘を試みることを許容することになり、本省令は実質的に不招請勧誘を解禁するものである。このような本省令の規定は、法律が不招請勧誘を禁止した趣旨から大きく逸脱し、下位の法形式である省令によって上位の法形式である法律の規定を実質的に骨抜きにするものにほかならず、法律の委任の範囲を超える違法なものである。そしてまた、本省令は、透明かつ公正な 市場を育成し委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである。

さらに、委託者に年収や資産の確認の方法として申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は、いずれも、従前より多くの商品先物取引業者が事実上同様の手法を採っているものであるが、その中で業者が委託者を誘導して事実と異なる申告や回答をさせるなどの行為を行って、委託者に被害を発生させる事例があることは、過去の多くの裁判例を見ても明らかであり、これらの手法が委託者保護のために機能するものとは評価することはできない。

そもそも、商品先物取引法における不招請勧誘を禁止する規定は、長年、同取引による深刻な被害が発生し、度重なる行為規制強化の下でもなおトラブルが解消しなかったため、与野党一致の下、2009年(平成21年)7月に法改正の上、導入された経緯がある(2011年(平成23年)1月施行)。しかし、その後においても、個人顧客に対し、金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して接点を持つや、すぐさま通常の先物取引を勧誘し、多額の損失 を与えるなどの被害が少なからず発生しているという実情がある。そのうえ、本省令により、商品先物取引の不招請勧誘が事実上解禁されることになれば、以前のように、商品先物取引業者の違法・不当な勧誘により、個人顧客が深刻な損失を被る事例が多発することが強く危惧される。

本省令は、かかる立法経緯及び被害実態を軽視し、商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するものであり、消費者保護の観点から到底許容できず、当会はこれに強く抗議する。

 

2015年(平成27年)2月5日

富山県弁護士会  会 長   島 谷 武 志