決議文・意見書・会長声明

取調べの可視化を求める会長声明

2012.11.28

1 最近、ウェブサイト上やメールで犯罪を予告したとして男性4人が逮捕されていた一連の事件について、真犯人によってパソコンを遠隔操作されていたことが明らかになり、捜査機関は、逮捕された4人に対し、誤認逮捕であったことを認め、謝罪したが、このうち2人(1人は少年)について自白調書まで作成されており、報道によれば、それにはありもしない「動機」まで書かれていたとのことである。身に覚えのない犯罪について自らが行ったと認める内容の自白調書が作成され、動機までが記載されたとすると、自白の強要や不当な誘導など、違法または不適切な取調べがあったものと考えざるを得ない。

2 我が国では現在、捜査段階における警察官・検察官の取調べには、弁護士の立会いが認められず、外部から目の届かない「密室」において行われている。そこで、脅迫や不当な誘導などの違法・不適切な取調べによって虚偽の自白調書が作成され、無実の者が起訴され、長期間身柄を拘束されるという冤罪事件が発生し続けている。
 また、自白調書の任意性や信用性が争われることが少なくないが、2009(平成21)年5月から実施されている裁判員裁判では、密室で作成された調書の任意性という水掛け論にならざるを得ない問題に、市民である裁判員を延々と付き合わせることは困難である。

3 とりわけ重要なことは、この間、志布志、氷見、足利、布川の各事件と虚偽の自白調書が作成された冤罪事件が次々に明らかにされ、捜査側が反省と再発防止を誓ってきたにもかかわらず、再び今回虚偽の自白調書が作成され、真犯人が名乗り出なければ冤罪が重ねられたであろうという事態が生じたことである。
 このことは、捜査機関側の自主的な反省、改善では虚偽自白は防げない、捜査機関側には処方箋はないという事実を端的に示している。

4 「密室」内での自白の強要や誘導など違法・不適切な取調べを防止し、冤罪を生まず、市民に無理のない裁判員裁判を実現するためには、取調べのすべての可視化を行うしかない。
 世界的な潮流を見ても、欧米諸国はもちろん、韓国、香港、台湾など近隣諸国においても、取調べの録音・録画を義務づける改革が先に行われており、国連の国際人権(自由権)規約委員会も、日本における被疑者取調べ制度の問題点を特に指摘し、被疑者への取調べが厳格に監視され、電磁気的手段により記録されるよう勧告している。

5 現在、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で取調べの在り方についての改革が議論されているが、当会は、市民の皆さんの大きな賛同を得ながら、取調べ全過程の録画・録音を義務づけ、さらに、取調べに弁護人の立会いを認める法律を速やかに成立させるよう求める。

2012(平成24)年11月28日

富山県弁護士会  会 長   青  島  明  生